笠間から水戸へ移動して,翌朝向かったのは水戸芸術館。5月17日まで開催されていた「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」展を見てきました。この不可思議なタイトルと,建物にぶら下げてあった謎の絵文字は展覧会を見終えてなお,謎のまま。
山口晃という画家の仕事については,「よくわからない」,としか言いようがないのです。もちろん好きか嫌いかという点では,好きだから見に行ったわけだけれど,洒脱かつ冷静な顔と,常軌を逸した狂気の顔との二面性が怖ろしい。いや,むしろ私はそこに惹かれているのだと思う。
水戸芸術館は吉田秀和が館長を務めていたこともあって,休憩コーナーの脇には過去の展覧会の図録とともに彼の著作がずらりと並んでいました。
偕楽園を散策してから茨城県立歴史館へ。なぜ「博物館」という名称を使わないのかな,と不思議に思ったところ,ここは「博物館」と「文書館」の両方の機能を備えているとのことで,なるほど納得。
テーマ展示は「古美術ワンダーランド」で,これが大充実の展示。江戸後期から明治の時代へ,日本人の感性やセンスを伝える絵画が並んでいたわけですが,河鍋暁斎の洒脱な筆致に,思わずにやり。
そして一橋徳川記念室では武具・刀剣の素晴らしい特集展示。 広い敷地でとても気持ちのよい場所でした。ところで,ここは開館当時はアジア専門の学芸員がいたのだろうか?ショップで過去の図録を見ていると,アジア関係の面白そうな企画展がたくさん開催されていたようです。「東南アジアの民族造形」(1994)の図録を購入して帰りました。
さて,短い旅から帰り,5月はほかに上野で集中して展覧会を3つはしごしました。「グエルチーノ展」,「鳥獣戯画展」,「インドの仏像」展についてはまたいずれ。次項からは西安への旅の記憶をとどめておくことにします。