2024-05-18

2024年5月,東京渋谷,「ハムレットQ1」

 渋谷のパルコ劇場で「ハムレット Q1」を観劇しました。3月のリア王に続いてのシェイクスピア悲劇。今回もまた,こんなに悲惨なストーリーだったかという衝撃が大きくて,しばらく負のエネルギーを引きずってしまいました。

 現代はQ2とF1を元にした台本で上演されるのがほとんどで,Q1の上演は珍しいということ。確かに上演時間も2時間半ほどで,スピード感あふれる舞台だったような。と言っても通常(?)のハムレットを見た記憶はないのだけれど,とにかく観客は膨大なセリフを浴びることに変わりはありません。光文社古典新訳文庫にQ1が入っているので,観劇の前後に読んでみました。訳文が読みやすく,あっという間に読了。「生か死か」や「尼寺へ行け」のセリフは劇の前半に登場します。

 ハムレット役の吉田羊の演技を始め,舞台の登場人物たちのエネルギーたるや,その源は「狂気」の一言。とにかく「狂気,狂気,狂気」の世界が舞台上に現前するわけで,観客の正気もどこかに連れて行かれる感覚です。

 呆然と終演を迎え,現実に引き戻されながら,今まであまり関心のなかった2人の登場人物,ローゼンクランツとギルデンスターンに興味津々。確かこの2人の名前を冠した舞台があったはず。トム・ストッパードの「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」。2017年にシス・カンパニーで上演があったみたい。ハヤカワ演劇文庫で読めそう。 

2024-05-01

2024年4月,大阪,「福田平八郎」展・「シン東洋陶磁 MOCOコレクション」展

 今回の関西旅行の大きな目的は空海ともう1つ,中之島美術館で「没後50年 福田平八郎」展を見ること。福田平八郎の日本画はずっと前から大好きで,その装飾的かつモダンな世界を通覧できる展覧会には大興奮。いやあ,とにかく楽しかったとしか言いようがない。

 NHK日曜美術館でも紹介されて,来場者も多かったけれども混雑というほどではなく(モネ展の方が長蛇の列でした),「漣」の前では,こんなに手の跡を見ることができるのか,と印刷で見るのとはまったく異なるその「画の力」にしばし足が動かなくなります。

 集英社の「現代日本美術全集 第6巻 福田平八郎」(1981)は私が初めて買った日本画の画集(展覧会図録ではなく)なのです。40年以上前のこと。こうしてまた人生の旅のピースをうめていく!

 大阪ではもう1つ展覧会を。リニューアルオープンした東洋陶磁美術館で「シン東洋陶磁 MOCOコレクション」展。美術館のエントランスやカフェが新設されてとても気持ちのよい美術館に生まれ変わりました。展示室そのものの見た目は従来と変わりませんが,今回はとにかくオールスターの展示。工事中に泉屋博古館で見たコレクション展の記憶が生々しいので,おっ,またお会いしましたね!みたいな気分で展示室を回り,カフェにも寄って大満足。春の関西小旅行はこれでおしまい。

2024年4月,奈良,「空海 密教のルーツとマンダラ世界」

 GWの前に,人混みを避けて奈良と大阪に弾丸旅行。完治しない腰痛が不安で(とほほ度マックス),予定していた旅程は短縮して展覧会も3つに絞りました。まずは奈良国立博物館で「空海 密教のルーツとマンダラ世界」展を。

 思ったより混んでなくて,ゆっくりじっくり展示を見ることができました。マンダラ世界を体感できる五智如来像の立体展示がとにかく感激。大日如来を中心に東西南北の配置で,まさに金剛界が眼前に広がっているかのよう。

 少し古い本ですが「マンダラの仏たち」(頼富本宏著,東京美術 1985)がとてもわかりやすく鑑賞の手を引いてくれました。この本は西安に旅行する前に購入して読んだもの。そう,西安では空海が修行した青龍寺も訪れたのでした。歳を重ねて,いろいろな旅がこうしてパズルのピースを埋めるように繋がってくるのがとても楽しい。唐やインドネシアからの出陳物も興味深く拝見しました。