「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」(トム・ストッパード,小川絵梨子訳,ハヤカワ演劇文庫 2017)読了。「ハムレット」の枠組みの中でローゼンクランツ(ロズ)とギルデンスターン(ギル)が彼らの不条理そのものの「死」へと向かっていく。
彼らはなぜ死ななければならなかったのか,「ハムレット」という戯曲の登場人物と観客,そしてこの戯曲の登場人物と観客(私はこの舞台は見たことがないので読者ということになる)の複雑な関係の上に構築されるのは,あまりに不確実な現実世界とでもいえばよいのだろうか。「ハムレット」の舞台を見終えたときの衝撃と同じような読後感である。いつか舞台も見てみたい。
(第三幕・船の上)ロズ「あいつらの狙いは俺たちだったってこと? そもそものはじめから。俺達ってそんなに重要人物?/ギル「でもどうして? 全てはこのため? 何もかもがこの俺たちのちっぽけな死のためなのか? だとしたら,俺たちは誰だ?」(p.217)