2023-09-14

2023年9月,東京西新宿,「野又穣 Continuum 想像の語彙」・「寺田コレクション ハイライト」

 オペラシティアートギャラリーで「野又穣 Continuum 想像の語彙」展。continuumは「連続(体)」という意味。目の前の風景はこの地球上の現実で,そこに描かれている不思議な建築物は非現実のもの。つまりは「現実と地続きにある非現実」(チラシより)を指してcontinuumと名付けたのだろうか。

 その精密な描写の技術そのものは,ホキ美術館で見た超写実絵画とも地続きと言えるかもしれないが,対象が「見たことも想像したこともないもの」であることが決定的な衝撃なのだ。私はこの画を前にして,一体何を見ているのだろう。画家の眼は一体何を見ているのだろう。言葉にならない。

 ふらふらとした足取りで階上の寺田コレクション展へ。おお,韓国単色画の展覧会で展示されていた鄭相和が2点! むしろこういう抽象画の方がすっと心に入ってくる。そんな気分になる体験だった。
 この日は六本木に向かって国立新美術館で二科展も拝見。坪田裕香さんの新作はWater in the bottle。水の中の物体を描くIn the waterのシリーズとは違って,閉じ込められた水を描く。

2023年9月,千葉,ホキ美術館

 豪雨の予報の前日,外房線に乗ってホキ美術館に出かけました。「瞳の奥にあるもの 表情でみる人物画展」がギャラリー1で開催中です。同館の所蔵する「超写実絵画」のコレクションからの展示。

 何しろ遠そうでなかなか機会がなく,今回は思い切って出かけてよかった。とにかく面白いの一言。超写実絵画と言えば「写真みたいな絵」という認識が普通かもしれないけれど,実物をこれだけたくさん見ると,まったく別の表現とわかります。

 確かに「写真のように」,「人間が描いている」のです。カメラが一瞬で捉える対象を,人間の手で気の遠くなるような時間をかけてキャンバスの上に作り出す。その技は感動的ですらあるし,対象に注がれる人間=画家の意図が作り出す背景やポージングなどの切り取り方にも感動します。

 ん? 何となくわかったような気分で長い回廊を歩いた後で,では「写真とは一体何だろうか」という問いが改めてぐるぐると眼の前に突き付けられた気分になりました。写真のことをずっと考えているので,そんなことを考えてしまう。
 
 三重野慶,塩谷亮,藤田貴也などの名前をしっかり覚えて東京駅へと戻りました。