理屈を超えて美しいものばかり。一番楽しみにしていたのは西洋への憧れから生まれた和ガラスです。「藍色ちろり」の深い藍色。緑や紫の鉢。ガラスの簪をこれだけたくさん見たのは初めて。
まさに「美に癒される」想いを堪能した午後。2021-02-14
2021年1月,東京赤坂,「美を結ぶ。美をひらく。」展
最後に美術館に出かけたのはもう一月以上も前。とにかく美しいものを見たいと思ってサントリー美術館の「美を結ぶ。美をひらく」展へ。副タイトルは「美の交流が生んだ6つの物語」ということで,「古伊万里」・「鍋島」・「紅型」・「和ガラス」・「浮世絵版画」「エミール・ガレ」の6章立てで構成されています。
読んだ本,島田雅彦の新刊と旧刊
すっかり体調を崩してしまっていた。コロナ禍の不安の中,身体も 心も悲鳴をあげる。やっと少しずつ回復している気がするものの,行ったり来たりの日々。こんな時こそ読書のはずだけど,なかなか集中力が続かない。島田雅彦の最新刊「空想居酒屋」(NHK出版新書)でせめて楽しい会食の夜を夢見て過ごすことに。
帯には「抱腹絶倒の食エッセイ!」とある。抱腹絶倒かどうかは微妙だけど,よくぞここまでお酒と食欲に情熱を注げるものだと感心する。でもそこはさすがに島田雅彦。「コロナの時代の食」なんて章のタイトルは,ガルシア=マルケスの「コレラの時代の愛」のもじりである! 楽しく読了。
少しずつ気力も回復してきて何度目かの断捨離に励んだところ,1枚の古いCDを見つけて,おや,と思う。こんなのいつ買ったっけ? そして思い出した。島田雅彦のかなり前のCDブック(懐かしい響き)だ。「死んでも死にきれない王国から」(主婦の友社 1992)は「ある旅人のアフリカ日記」という副タイトルで,藤井春日のアフリカ写真とYAS-KAZの音楽とのコラボ。藤井春日は昨年,文化村の「東京好奇心2020」に参加していた写真家。ミュージシャンは知らない名前。
どんな話だっけ?と読み始めて一気に読了。若かったな。作家も読者も。「私」を作家にそのまま重ねてしまうのはあまりに危険だけど,アフリカを旅する島田雅彦の脳内にははっきりと「エステル」という魔女が生きていたのだろう。お気楽な「空想居酒屋」の後に読んだだけに,エログロ(ソフトではある)には若干,ひく。
不可思議な王国で謎のバスに乗る場面。「バス(?)は闇を切り裂くスピードで走った。エンジンは奇妙な音をたてていた。/オンネン。オンネン。/怨念?/そして,ひどく揺れた。…」(p.37)
約30年前の性欲と,現在の食欲。同時代の一人の作家を追い続けるのは何とも面白い。読者も年を取るわけだ。
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