「植物忌」は植物と人間の境界線が曖昧な世界のさらに先をいく(上記書評より),植物に変身した人間たちの物語。冒頭の「避暑する木」(書き下ろし)は不穏な展開だけれども,明るいユーモアが通底していて,あれ,楽しいじゃないの,と思いながら読む。
しかし,「記憶する密林」,「スキン・プランツ」…と読み進めるうちにその不穏な世界に徐々に飲み込まれ,植物転換手術を受ける「ぜんまいどおし」に至っては,あまりに爽やかにグロテスクな世界を描き出す筆致にぞっとしてしまう。
もう無理,と思いながら結局最後まで読み通してしまった。最後の「喋らん」を読みながら,私は我が偏愛する蘭の鉢植えたちを横目で確認しながら,「あなたたちはこんならんとは違うわよね」と話しかけてしまった。返事を待っていた。私の指の先は緑色になっていた。