2022-08-23

2022年8月,東京上野,「故宮の世界」展・「チベット仏教の美術」展・河口慧海「チベット旅行記」読了

  暑い暑いと言いながら,少しずつ朝晩は秋の空気を感じるようになってきました。東京国立博物館へ出かけて特別展「故宮の世界」展と特集展示の「チベット仏教の美術」展を見てきました。

 故宮展は「特別デジタル展」で,「最先端のデジタル技術を活用した文化財展示の新たな可能性に挑戦」(チラシ)ということ。この最先端も,きっと時を経ずしてどんどんアップデートされて時代遅れの技術と見なされる日がくるのだろうなと思いつつ,「バーチャル紫禁城」,「デジタル多宝閣」,「千里江山図巻シアター」を無邪気に(?)楽しんだのでした。東博所蔵の文化財展示もあります。

 ところで私が北京を訪れたのは2012年。観光ツァーに組み込まれた故宮博物院は広大な敷地の中をもっぱら歩くのがメインで,文化財の展示を見る時間なんてほとんどなかった。唯一,皇帝の時計コレクションの展示は見たけど,通常の観光コースの一環というわけではないようで,建物も展示ケースも埃や汚れが目立ってがっかりしたのでした。

 デジタル多宝閣で紹介されていたすばらしい工芸品の数々は故宮で一般公開される機会があるのかなあ。もちろん,優品は台北に運ばれてしまっているから台北故宮で楽しめるけれど,やはり紫禁城という場所の力は圧倒的です。美しいデジタル画像を堪能しました。

 平成館企画展示室では「チベット仏教の美術」展が開催中です。河口慧海の「チベット旅行記」をちょうど読み終えたタイミングの展覧会。慧海の遺族からの寄贈品の一部も紹介されていて,なんともタイムリー(自分的に)。

 東博でチベット仏教関連資料の展示は「河口慧海将来品とラマ教美術」(1999)以来,約20年ぶりなのだそう。仏画や仏像,法具,仏塔などの他にも慧海蒐集の風俗資料の展示などもあってワクワクします。


 「チベット旅行記」は講談社学術文庫版(全5冊)で読了。分冊の文庫本だと持ち運べて便利。2週間くらいだったかな,ずっと遠い異郷を旅している気分でした。それにしても厳重な鎖国をしている地へヒマラヤを越えて密入国したのは今から120年以上も前。求道者としてのそのあまりにも強い意思にひたすら感動。
 
 同じ古書店から「チベットわが祖国 ダライ・ラマ自伝」(中公文庫)も入手済みなので楽しみです。

2022-08-15

2022年8月,東京竹橋,ゲルハルト・リヒター展

 東京国立近代美術館で「ゲルハルト・リヒター展」を見ました。平日だけどお盆期間ということで,会場はたくさんの観客でびっくり。ポスターにもなっている初期のフォト・ペインティングのイメージが先行して,その後の仕事に関してはあまり知識がないまま展示室へ。

 2012年に訪れたミュンヘンで見たような気もするし,見てないような気もします。ピナコテーク・モデルヌの当時のリーフレットを探し出して見たけれど,やはり展示はなかったよう。調べてみたらピナコテークの近くにあるブランドホルスト美術館が現代美術のコレクションが充実しているよう。そういえば,ピナコテークを3つ回って精根尽きてブランドホルスト美術館には行かなかったんだった。行っとけばよかった。

 近年の最重要作品という「ビルケナウ」は圧巻の展示。抽象絵画の下層にアウシュビッツ強制収容所で隠し撮りされた写真を書き写したイメージが隠されているとのこと。それを踏まえて,同じ部屋に展示されている「グレイの鏡」に移った自分自身の姿と一緒に眺めていると世界が裏返るような不思議な感覚を覚えます。

 好みということでは初期のフォト・ペインティングの「花」や「頭蓋骨」が印象的でした。特に「ユースト(スケッチ)」の海景には惹かれる。一生に1枚,こんな絵を描くことができたらそれで人生満足なんじゃないか,とそんなことを考えてしまいました。凡人の極み。。

 常設展も充実の8月。瀧口修造のデカルコマニー3点を見て眼福でした。駒井哲郎の詩画集も。

2022-08-14

2022年7月,東京恵比寿,「メメント・モリと写真」展

 写真美術館で9月までの長い会期で「メメント・モリと写真」展が開催中です。副タイトルに「死は何を照らし出すのか」とあります。

 TOPコレクションということだったので,すべて写真美術館の所蔵作品で構成されているのかと思いきや,展示入口のハンス・ホルバイン(子)の木版画と最後の小島一郎はそれぞれ国立西洋美術館と青森県立美術館の所蔵品です。小島一郎のオリジナルプリントとの邂逅はとてもとても嬉しい。

 時代も国も様々ないわばオールスターの写真家たちの作品が,メメント・モリというテーマのもとに展示されている様は圧巻です。中世ヨーロッパのキリスト教世界の言葉「死を想え」が,現代を生きる私たちのもとへ差し出される媒介としての写真。写真の中の「過去の時間」の集積を見ながら,観客は生きること死ぬことの意味を考える。

 どの写真家も,厳選された作品という意味でとにかく強い作品ばかり。ロバート・フランクの十字架を背負う男。ウジェーヌ・アジェの誰もいないパリの街。挙げ出したらきりがないけれど,思わず家に帰って写真集を繰り返し見た作家たち。マリオ・ジャコメッリ。小島一郎。牛腸茂雄。

 すばらしい展覧会でした。今年一番かも。

 

2022-08-07

2022年8月,龍岩素心の開花

  昨年,株分けをして開花しなかった龍岩素心が開花しました。2年ぶりの清楚な姿と香りにただただ感激。嬉しいなあ。どうしてこんな暑い盛りに開花するのかが不思議なんだけど,とにかくまた元気に育ってほしいと願うばかり。