故宮展は「特別デジタル展」で,「最先端のデジタル技術を活用した文化財展示の新たな可能性に挑戦」(チラシ)ということ。この最先端も,きっと時を経ずしてどんどんアップデートされて時代遅れの技術と見なされる日がくるのだろうなと思いつつ,「バーチャル紫禁城」,「デジタル多宝閣」,「千里江山図巻シアター」を無邪気に(?)楽しんだのでした。東博所蔵の文化財展示もあります。
ところで私が北京を訪れたのは2012年。観光ツァーに組み込まれた故宮博物院は広大な敷地の中をもっぱら歩くのがメインで,文化財の展示を見る時間なんてほとんどなかった。唯一,皇帝の時計コレクションの展示は見たけど,通常の観光コースの一環というわけではないようで,建物も展示ケースも埃や汚れが目立ってがっかりしたのでした。
デジタル多宝閣で紹介されていたすばらしい工芸品の数々は故宮で一般公開される機会があるのかなあ。もちろん,優品は台北に運ばれてしまっているから台北故宮で楽しめるけれど,やはり紫禁城という場所の力は圧倒的です。美しいデジタル画像を堪能しました。
平成館企画展示室では「チベット仏教の美術」展が開催中です。河口慧海の「チベット旅行記」をちょうど読み終えたタイミングの展覧会。慧海の遺族からの寄贈品の一部も紹介されていて,なんともタイムリー(自分的に)。
東博でチベット仏教関連資料の展示は「河口慧海将来品とラマ教美術」(1999)以来,約20年ぶりなのだそう。仏画や仏像,法具,仏塔などの他にも慧海蒐集の風俗資料の展示などもあってワクワクします。
「チベット旅行記」は講談社学術文庫版(全5冊)で読了。分冊の文庫本だと持ち運べて便利。2週間くらいだったかな,ずっと遠い異郷を旅している気分でした。それにしても厳重な鎖国をしている地へヒマラヤを越えて密入国したのは今から120年以上も前。求道者としてのそのあまりにも強い意思にひたすら感動。