2014-06-15

2014年6月,東京京橋,「描かれたチャイナドレス」展

 展覧会のタイトルにもチラシにも,「おや」という感じで惹かれた展覧会。「チャイナドレス」というピンポイントにテーマを絞っているのも新鮮だし,ルネサンスの肖像画の様式で描かれた女性の横顔もとても美しい。(藤島武二「女の横顔」1926-27)
 
  強い雨の日の午後,京橋のブリジストン美術館へ向かいます。エレベーターを使って2階に上がると,「チャイナドレス」展は第1室と第2室の二部屋を使った展示。1910年代から40年代初めに描かれた30点ほどが展示されています。

 図録や紹介記事からのあとづけの知識で言えば,日清戦争以降,大陸進出への足掛かりを築いた時期に生まれた日本のオリエンタリズム(東洋趣味)を表象しているのが,これらチャイナドレスを身にまとう女性たちを描いた作品ということです。

 こうしたオリエンタリズムは帝国主義的だという指摘のもと,長く議論のテーマとなっているそうなのですが,さて,1世紀近いときを経て美しい美術館の一室でこれらの絵に向かい合ったとき「鼻持ちならないオリエンタリズム」を感じるだろうか。私の答えは「否」でした。

 描かれている女性たち(中国人女性も日本人女性も)はみな,凛として正面を見据え,美しいドレスから発せられる魅力は生々しくも力強い。時が経つのも忘れて画に見入りました。

 とりわけ惹かれたのが,藤島武二の6点のうち「匂い」です。テーブルの上に鼻煙壷が描かれています。今まで鼻煙壷は,鑑賞やコレクションの対象としての「もの」の存在ばかりに目がいっていましたが,タイトルを見てはっとします。このどこか妖しい雰囲気を放つ女性は,嗅ぎタバコを楽しんでいるのです。嗅いだことのないその匂いを,ひそやかに想像してみた午後。

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