松濤美術館で開催中のロベール・クートラス展を見てきました。ロベール・クートラス。堀江敏幸の著書「一階でも二階でもない夜」(回送電車Ⅱ)を読んだときに始めて知った名前です。
いつか機会があれば実物を見てみたいと思っていたので,松濤美術館での開催を知ったときは本当にうれしかった。2月初に堀江敏幸と遺作管理人である岸真理子・モリア氏との対談が行われていたことは気付かずにいて,痛恨の極み。
クートラスはタロットカード様に切り抜いたボール紙に油絵具で描くcarteの製作に没頭,生涯約6000枚を製作したということ。美術館の部屋にはその約12センチ×6センチくらいのcarteが整然とフレームに収まって展示されています。その配置もまた美しいのですが,1枚1枚に描かれているモチーフが,人面の蝶や鳥,悪魔,聖母子そして骸骨などなど奇怪でありながらユーモラスです。
これらのcarteはすべて「僕の夜 Mes Nuits」というタイトルです。堀江敏幸は著書ではこれを「我が闇」と訳していて,作品集として出版されたときに邦訳として前者が固定したということなのか,実物を見た印象としては確かに「我が闇」はちょっと重すぎる印象。毎晩毎晩,アトリエで1枚ずつ描かれたこれらのcarteはまさに画家の夜そのものなのではないか。
フレームから取り出して,1枚ずつ手にとって眺めることができたらよいなあ,とそんなことを夢想してしまう。
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