2015-04-13

2015年4月,東京中目黒,目黒川とカウブックスで買った本

 東京のお花見の名所の目黒川沿い。3月最終週の人出はいかばかりだっただろうか,というその場所へ,ほとぼりが醒めるのを待つようにして出かけてきました。これ以上のへそ曲がりが存在するだろうか。別に行かなくてもいいじゃん,と思いながら,代官山ツタヤへ出かけたついでに中目黒で下車。

 すっかり葉桜かと思いきや,枝に残る花びらや川面を漂う花びらが儚く美しい。しばし歩を止めて,今年も桜の季節があっという間にやってきてあっという間に過ぎ去っていったのを実感する。
  さて,中目黒下車のお目当ては古書店のカウブックス。まだお花見の名残の週末ということで,店内にはひっきりなしにお客さんが入ってくる。感じのよい若い店員さんが「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」とまるで小鳥の囀りのように繰り返すのが心地よい。

 この店は串田孫一がたくさんそろっていて,店主が山好きなんだろうか。「山の独奏曲」(山と渓谷社,1971)が画文集だとはまったく知らなかった。頁をめくって,そのモダンな装画の数々にすっかり心惹かれる。
  そして短い随筆のタイトルのどれもがみな,魅力的。「白骨」は藪の中で小動物の骨を見つける話だが,その藪の描写にはっとする。以下,引用します。

 「藪は,まだそれほど黄ばんではいなかったが,生命の疲れ,老いの息,しめっぽい匂いがあった。つまりそれは秋を予告し,秋の意味を思い出させるものだった。(略)どうもあまり好ましいものではない。それは,つい数日前までは盛んな命に自ら酔ってもいたものが,まだそれとは気付かないうちに衰えを見せ出している感じでもあった。もっともそれに気がついたところで,自ら求め,季節に先がけて枯れてしまうわけにも行かず,それを考えると,あわれにも思うのだった。」(p.170より)

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