首藤康之が朗読劇に出演するというので,京急線新馬場駅にある六行会ホールへでかけてきました。タイトルは「季節が僕たちを連れ去ったあとに」。山田太一編の「寺山修司からの手紙」を舞台化したものです。
寺山修司はどちらかというと食わず嫌いで,劇作も短歌もほとんどと言っていいほど知らない。山田太一に至っては,プロフィールを読んで「ふぞろいの林檎たち」もこの人の脚本なんだ,と始めて知りました。
舞台は若き日の二人の往復書簡の朗読という形式をとりながら,時間と空間を自在にとび,山田太一による寺山への弔辞で幕を閉じます。やはり,首藤康之の強い個性が舞台を支配していたように思えます。
「書くことで自分を隠し続けてきた」といわれる寺山修司を,舞踊という表現手段を封じて表現した舞踊家の首藤。若き日から「死」と直面し続けた劇作家と,DEATHをテーマにハムレットを踊った舞踊家の精神の共振が客席にも伝わり,静かに震える。
物語の終幕,寺山が「人生に淋しいことは何もないんだ」と呟いたように聞こえ,その前後の文脈を知りたくて原作「寺山修司からの手紙」(山田太一編,岩波書店2015)を読んでみたのですが,どこにも見つけることができませんでした。見落としたのか,それともそんな台詞はなかったのか。でも,私は確かにあの日,首藤康之からその言葉を受け取ったのだ,と思えてきます。
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