2022-06-19

読んだ本,「見えない都市」(イタロ・カルヴィーノ)

 マルコ・ポーロがフビライ汗にさまざまな空想都市の報告をする。「見えない都市」(イタロ・カルヴィーノ 米川良夫訳 河出文庫)読了。「ここではないどこか」に旅するのは海外小説の醍醐味だけど,この本は「どこにもない場所」を旅した男が読者を導く。どこへ?「どこでもない場所」へ。

 ぞくぞくする報告を読み終えて,訳者によるあとがきがこのカルヴィーノの世界の意味を読み解く大いなる助けとなった。タイトルの配置,テクスト群の関係の密な編目。「(略)それでいながら,カルヴィーノは世界の意味を,隠された法則と秩序を探し続けねばいられない。もしも世界に〈意味〉がないのならば,我々が可能な〈意味〉を与えなければならない。」(p.221)

  ストーリーを追う小説ではないので,心に残る文章に付箋を残しながら頁を繰ると,付箋だらけになってしまった。「都市と死者 2」より。「私はこう考えました,『恐らくアデルマは,死ぬときにやってくる都市なのだ。そしてここではだれもが自分の知っている人たちと対面するのだ。これは,私も死んだというしるしなのだ』と。そして私はこうも考えました。『あの世は幸福な所ではないというしるしでもある』と。」(p.125)

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