身辺事情(?)にいろいろあって,ほとんど更新をしていなかった。読書はほとんど進まなかったが,記録に残さないと何もかも(読んだことも)忘れてしまうので,簡単な忘備録として。
「チベットわが祖国」(ダライ・ラマ著 木村肥佐生訳 中公文庫 1998)はダライ・ラマの自叙伝。転生者探しからダライ・ラマとして生きることになる序盤から,中国の侵略とインド巡礼の旅を経てラサを脱出し,インドへ亡命するその激動の日々がときに淡々と,そしてときに激情豊かに描かれる。決死の脱出のくだりには,これが現実の出来事なのかと改めて驚異の感情を抱く。
加藤周一の「高原好日」(ちくま文庫 2009)には「20世紀の思い出から」という壮大な副タイトルがついている。夏の高原で紡がれたいわば交友録なのだけれど,62人の友人(中には一茶や佐久間象山,巴御前など「幽霊」との会話も含まれる。それぞれ相手の人格を分析しながら自分との関係を見つめることで,「加藤周一の思索」そのものが描かれているようだ。特に興味深かったのは辻邦生,辻佐保子,池田満寿夫,武満徹などなど。
この2冊の文庫本は同じ古書店主から求めたもの。本を買うという行為とともに美しい時間を手渡されたようで,本を愛する人への感謝の気持ちでいっぱい。
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