「ベス単」は初めて聞きました。大正時代にアマチュア写真家の間で流行した「ベスト・ポケット・コダック」という単玉レンズ付きカメラのことだそう。そのレンズフィルターのフードを外して撮影すると独特のソフトフォーカス効果を得られるとのこと。
半世紀を経て,植田正治がその撮影手法をカラーフィルムで蘇らせたのがこの「白い風」シリーズ。懐かしい,とか郷愁を誘う,とかいろいろな形容の仕方がありそうな風景写真だけれど,「砂丘」のシリーズを思い出す構図の子どもたちの写真など,やはり植田正治の写真。
現代のカメラでソフトフォーカス機能を使ってもこういう写真は撮れないだろうなと思うのは,テクニカルな次元のことばかりではないと思えます。その一瞬の風景を切り取る写真家の眼がそこにある。赤いランドセルの少女。校庭の一本の木。民家の軒先。
会場にあった1981年刊「白い風」を手に入れたくなりました。あちこち検索してみたけど,そもそもほとんど流通なし。どこかの古書店か市で出会えることを祈りつつ。
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