2024-10-20

読んだ本,「百年の孤独」(G・ガルシア=マルケス)

 文庫化されて話題になっている「百年の孤独」。マルケスの他の多くの作品に影響していたり,それらの解説やあとがきを読んだりしてすっかり読んだ気になっていたけれど,未読のままだった。体調のすぐれない日が続き,この本を読まないままでは終わるまじ,と真剣に思うようになったというわけ。私が読んだのは新潮社の「ガルシア=マルケス全小説」シリーズの鼓直訳(2006)。美しい装丁の本。

 ペースをつかむまでは少し時間を要したが,この小説世界に一度はまると,文字通りどっぷりとはまって一気に読了。読後はしばし呆然となって,ただただすごいとしか言葉が浮かばない。

 マコンドの街の百年の歴史が,幻想と現実が溶け合って語られる。この不思議な街で起こる奇想天外というべき数々の出来事と,そして登場する男たち女たち。木村榮一の「ラテンアメリカ十大小説」(岩波新書 2011)では彼らのことを「途方もない人物たち」と指摘している。

 ここに何か感想めいたものを書いても,前述の書を始めラテンアメリカ文学の指南書からの受け売りになってしまうが,やはり衝撃を受けたのはラスト近くで語られる2つの出来事だ。1つははるか昔に亡くなったメルキアデスの残した羊皮紙が町もろとも吹き飛ばされていくこと。もう1つはアマランタ・ウルスラとアウレリャノの間に産まれたアウレリャノについて,「この百年,愛によって生を授かった者はこれが初めて」(p.467)という一節。物語はここで終わるけれど,読者は歴史とは何か,そして愛とは何かを考え続けなければならないのだ。
 蛇足ながら,「ラテンアメリカ十大小説」を読み返して,これも未読のコルタサル「石蹴り」も読まずば終わるまじ。次の一冊。

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