すっかりラテンアメリカ文学モードに入っていたら,図書館に予約していた芥川賞受賞作の順番がきた。「サンショウウオの四十九日」(朝比奈秋 新潮社, 2024)を読了。朝比奈氏を読むのは初めて,ストーリーなど事前知識もなし,唯一知っているのはこの作家は医師だということ。
読み始めてすぐに,その奇抜な身体性の設定に驚き,これからすごいものを読むのではないかと期待が高まったのだが。哲学的な思索が印象的なエピソードとともに読みやすい言葉で綴られていて,そればかりが読後の記憶に残る。
そして、物語は今一つ盛り上がらないまま,終盤はちょっと肩すかしの印象。結合双生児の杏と瞬の刺激的な「物語」が読みたかった。ただ,「意識の死」についての考察のくだりは刺激的だ。「肉体を離れても意識はある。死んでも,意識は続く。死が主観的に体験できない客観的な事実で,本当に恐れるべきは肉体の死ではなく意識の死ならば,どういったことで意識は死を迎えるのだろうか。」(p.123)
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