京都も暑い夏でした。高麗美術館で「高麗青磁の精華 心にしみ入る翡色の輝き」展を見てきました。京都市北区,「賀茂川中学前」というバス停からすぐのところにあるこじんまりとした美術館です。
高麗青磁も朝鮮白磁も,朝鮮の「やきもの」はとても魅力的です。昨年,千葉市美術館で開催された(大阪東洋陶磁美術館開催の巡回展)「浅川巧生誕百二十年記念 浅川伯教・巧兄弟の心と眼-朝鮮時代の美」展では白磁をまとめて見ることができたので,今回は高麗青磁の逸品との出会いを楽しみに出かけました。
「翡色」は翡翠の色。優美な,しかし威厳をたたえた曲線が美しい梅瓶や,雲間に遊ぶ鶴を象嵌で施した皿を前にすると,「心にしみ入る」色とはこういう色のことか,と眼が悦びます。白磁や粉青沙器,ほかにも朝鮮時代の絵画や工芸の名品も静かに並び,真夏の喧騒をしばし忘れる午後でした。
展示室のゆったりとしたソファの脇に,室生犀星の古書が二冊置いてありました。「李朝夫人」(村山書店,1957)と「陶古の女人」(三笠書房, 1956)。いずれも高麗青磁をめぐる短い随筆が収められていて,しばし活字の世界へ。青磁にまつわる随筆ならばきっと数多くありそうですが,美しい展示物に寄り添うようにひっそり置かれたこの二冊の古書もまた,心にしみ入る色をしていました。