ここのところ,知識を仕入れるための読書が続いて(身になったかどうかは別として),小説をほとんど読んでいなかった。この連休に北関東をぐるりと廻る短い旅をすることにして,その道連れに選んだのがガルシア=マルケスの「ママ・グランデの葬儀」。
かなり前に読んだ気になっていたのだが,図書館でパラパラと頁をめくったら,その登場人物もストーリーもまったく記憶にない。借り出して,まずは大宮へ向かう車中で「火曜日の昼寝」,「最近のある日」と順に短編を繰っていく。
「最近のある日」は野谷文昭氏が東大最終講義で「世界で一番美しい水死人」と併せ読みをすることによって小説を読む醍醐味を語ってくれた短編。わずか4ページだが,文章自体も短く簡潔で,作者は語らない。一体何が起きているのか,描かれている顛末は明確だけれど,まるでミステリーのようでもある。だからこそ,今一度「世界で…」も読み返してみよう。
「ママ・グランデの葬儀」は「百年の孤独」につながるマコンドを舞台にした短編。淡々と語られるママ・グランデの死のストーリーは,他の短編と比べるとマルケスらしさみたいなものが希薄に感じられる。
「この村に泥棒はいない」や「バルタサルの素敵な午後」のような,これぞマルケスという奇想あふれる短編を読んでいると,一瞬時間や場所の感覚が歪むのがわかる。私はこの電車に乗ってどこへ向かっているのか。
旅の伴としてはよい選択だっただろうか?いずれにしても1泊2日の旅程は,旅先の楽しい思い出と,この短編集の充実した読後感に満たされて,すこぶる楽しい時間だった。大宮盆栽美術館,笠間陶芸美術館,水戸芸術館,茨城歴史館については次項で。
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