前半は「振付家・S」が舞踊の歴史を読み解き,出演者を教化し,後半はSilent Songsが上演されます。前半は単純に楽しい。首藤康之の「牧神の午後」の動きなんて写真でしか見たことがなかったので,思わず身を乗り出す。
しかし後半に入ると舞台は一気に不穏と狂気が支配します。首藤康之のダンスはソロか中村恩恵とのデュエットしか見たことがなかったので,男女2人ずつの群舞(と言えるかどうか)は新鮮でもあり,微妙な違和感を感じるものでもありました。
男と女がいて愛と死がすべての世界に,女同志(しかも姉妹だ),男同士(振付る者と振付けられる者)という関係が持ち込まれて,愛憎のベクトルが幾重にも交錯する。観客は息をつめて「失われた歌」が永遠の向こう側から再び此岸へと舞い戻ってくるのか,ひたすらその一瞬の光を見逃すまいと彼らの肉体を凝視する。
ただただ圧倒的な約1時間の舞台でした。赤レンガ倉庫のホールは最前列が舞台と同じレベルなので,早めにでかけて最前列に席をとりました。眼の前で見る首藤康之のソロパートは,ストーリーと切り離して見てもやはり圧巻で,その差しのべられた手の先には神の領域があるとしか思えない。
冷たい雨の降る11月,こんなに海が近かったのか,とホールを出てデッキから望む水平線。
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