日本と中国の工芸の,二つの展覧会を見てきました。一つは「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」展を日本橋の三井記念美術館で。なぜかチラシには山口晃画伯が登場して,ユーモアたっぷりのコメントをいつものタッチで描いています。
柴田是真の漆工に「遊びは本気で」とコメントしてるのが至言ですね。並河康之の七宝は,庭園美術館の展覧会をまあ,いいかとパスしてしまったのを後悔するような美しさ。『紫陽花図花瓶』には「目でなで回したい」というコメントが。こちらも全くその通り!という何だか山口礼賛の展覧会になってしまったけど,鑑賞の手引きをしてもらったみたいでとても楽しいひと時でした。印象としては影響を受けた現代アートの超絶感の方が強烈だったかも。
で、七宝つながりで上野毛の五島美術館で「光彩の巧み」展を堪能。こちらはちょっと襟を正す感じの展示です。人の手が「もの」に力を与え,その力は人の領域を超えてもはや神へと近づく。そしてその「もの」を所有することで人は権威をまとう。そして時を経て,人(=私)はその美術館におさまった神秘を目にして,言葉にならない「美」を見出す。
溜息しか出てこない美を前にして,日々の煩雑な思いを忘れます。ところで,ああ,七宝っていいなあと思いながら,そういえば20年くらい前に初めてシンガポールに行ったとき,ふらりと寄った古道具屋で小さな瓶を買ったのを思い出しました。書棚の片隅に眠っていた私の七宝。まあ,お土産品だけど,よく眺めるとそれなりに美しい。美術館の前の石畳。
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