掛川源一郎。2020年に北海道立文学館のショップで見かけたモノクロのポストカードに感激した記憶が蘇る。この写真集には,カードになっているアイヌ写真やスケートリンクのイメージなども所収されている。
この写真集を見ていると,北海道の風景や人を切り取った1枚に,その風景や人がそこに成立している必然性が感じられてくる。それは「歴史」と言い表すことができる強く優しいものではないだろうか。
アイヌの儀式の写真にこんな言葉が添えられている。「アイヌ民族の伝統儀式を撮らせてくれと私が頼むと,エカシはいつも快く引き受けてくれた。あるときは,こんなハガキをもらった。『一切OK。先生が来るなら夜中でも元旦でもよい。風邪引かぬようにして来てくれ。夜具もいっぱいかけて寝せる。御神酒も用意しておく』」(p.29)
美しい手仕事が好きだからアイヌに興味があるなんて,そんな軽薄な思いの自分が恥ずかしくなる。背筋を伸ばして頁を繰る。1枚1枚をじっと見る。
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