2022-01-14

読んだ本,「gen 掛川源一郎が見た戦後北海道」

 東京都写真美術館の「日本の新進作家 vol.18」展の池田宏のアイヌ写真の展示に触発されて,掛川源一郎の写真集を見る/読む。壁面に写真が展示され,部屋中央にアイヌ関連の書籍が置かれていた。「gen 掛川源一郎が見た戦後北海道」(北海道新聞社 2004)はその中の1冊。目にした瞬間,あっと声をあげそうになった。札幌で初めて知った写真家の写真集だ。

 掛川源一郎。2020年に北海道立文学館のショップで見かけたモノクロのポストカードに感激した記憶が蘇る。この写真集には,カードになっているアイヌ写真やスケートリンクのイメージなども所収されている。

 この写真集を見ていると,北海道の風景や人を切り取った1枚に,その風景や人がそこに成立している必然性が感じられてくる。それは「歴史」と言い表すことができる強く優しいものではないだろうか。
 
 アイヌの儀式の写真にこんな言葉が添えられている。「アイヌ民族の伝統儀式を撮らせてくれと私が頼むと,エカシはいつも快く引き受けてくれた。あるときは,こんなハガキをもらった。『一切OK。先生が来るなら夜中でも元旦でもよい。風邪引かぬようにして来てくれ。夜具もいっぱいかけて寝せる。御神酒も用意しておく』」(p.29)

  美しい手仕事が好きだからアイヌに興味があるなんて,そんな軽薄な思いの自分が恥ずかしくなる。背筋を伸ばして頁を繰る。1枚1枚をじっと見る。

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