「英伸三 映像日月抄 そのときのあのこと あのときのそのひと」というタイトルの写真展は,その通りにノスタルジックな内容。しかし,美しいプリントには瑞々しい強さが漲り,会場全体に緊張感をもたらす。
展覧会のイメージになっている波打ち際ではしゃぐ少女たちの遠景は,「集団就職の若者」の1枚で,彼女たちはふるさとの海に別れを告げているのだった。写真家の眼が捉えたこの海の光は,若者たちの前途を願っているだけではないだろう。その未来に横たわるそれぞれの不安や故郷との別れの哀しみが,寄せては返す波となって,今ここに生きる私の眼に届いて胸が熱くなる。
英伸三はまったく未知の写真家だった。「町工場」シリーズの工業製品のイメージも,中国を撮影したイメージもとてもよかった。知らない写真家がまだまだいっぱいいるなあ,もっともっと見てみたいと思った冬の午後。
ほとんど葉を落とし,わずかに紅葉が残る。五島美術館では「古染付と祥瑞 愛しの青」展を見る。古染付の方が余白が多くて好みだけど,祥瑞は「しょんずい」という響きが好き。タイトル通り,これでもかという美しい青の器の数々を堪能。 渋谷ヒカリエホールでは「ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」展を見る。このホールは展覧会専用ではないと思うけど,ドラマチックに演出されていて楽しい。ただ,フライヤーが小さくてぺろっとしてて,文字も読みにくい。そのせいで展覧会というよりは家具の展示会みたいな印象を受けてしまう。ささいなことなんだけどね。右の写真はウェグナー邸のミニチュアの内部の一部。本のタイトルまで芸が細かい!
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