2016-10-29

2016年10月,北陸,金沢市近世史料館,富山市佐藤記念美術館

  家族の見舞いに秋の北陸路へ。心浮き立つ旅程ではないのですが,空いた時間を利用して金沢市近世史料館を訪ねてみました。明治時代の建築「金沢煙草製造所」を利用した赤レンガの瀟洒な建物が,谷口吉郎・吉生親子共同設計という金沢玉川図書館と隣接しています。

  図書館は,壁面が緑色の鉄板でできた大胆で力強い建物ですが,赤レンガを生かした中庭から近世史料館へと自然につながり,とても気持ちのよい空間です。今回は図書館は利用しませんでしたが,時間のあるときにゆっくり本を読んでみたい。

 近世史料館では「秋季展 武家と鳥-鷹狩・鳥構場-」を見る。加賀藩前田家の鷹狩の様子が手に取るようにわかる構成で,古文書の読み下し文と解説が掲載された親切な図録が会場で配布されています。古地図の前で,馴染みの地名を探して時を過ごす。当たり前のように,現在の地形や名称がそのまま残っていて,街全体がタイムカプセルなんだな。ここは。

 金沢では古書「あうん堂」へも初めて立ち寄りました。こじんまりとしていますが,店主の趣味がよく伝わる素敵な古書店。買ってきた本についてはまた項を改めて。
 
 帰路は富山へ寄って,富山城址公園内の富山市佐藤記念美術館へ。特別展「敢木丁コレクション受贈記念展 ―知られざる東南アジアの陶器―」展が開催中で,ヴェトナム,クメール,タイの陶器のコレクションを見ました。すばらしいコレクションを見ていると,しばし心配事から解放されます。

 敢木丁(カムラテン)コレクションは,展覧会チラシによると「1800件に及ぶ日本有数の個人コレクション」とのことで,富山に一括寄贈されたのだそう。少し検索してみると,京都の北嵯峨に個人経営の博物館があったみたい。

 やきものに限らず,コレクションについて「質・量ともに素晴らしい」というのは常套句だけれど,個人が集めたことによる審美眼の「一貫性」みたいなものがはっきりと伝わってきて,ちょっと打ちのめされた感があるすばらしい展覧会。安南青花はたくさん見てきたつもりだったけれど,こんなに繊細は鳳凰文は初めて,という碗にも出会えて,眼福でした。

 凛とした秋の気配に満ちた庭園。

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