2019-08-11

2019年8月,東京六本木,クリスチャン・ボルタンスキー展

  国立新美術館で開催中のクリスチャン・ボルタンスキー展を見る。「50年の軌跡 待望の大回顧展」というキャッチコピーが踊る。
  ボルタンスキー作品との初めての出会いは越後妻有トリエンナーレだったかと思う。心臓の鼓動が響く古い校舎の中を,お化け屋敷か?!と嫌がる同行者の手を引いて進んだのを思い出す。

 今展は回顧展だが,彼の製作のテーマが一貫して「死」であることを強く感じさせられるものだった。身近な人の死の後なので,かなり重い。「ぼた山」の黒い衣服の匿名性・無名性は却って具体的に人の死を目に見える形で提示している。

 そしてその周囲の「発言する」には,凍り付くような恐怖感を覚えながら耳を傾ける。黒い衣服をまとった人形のインタビュアーの質問が向けられる先は,死者なのだ。それを私たちが聞く。私たちは死んでいるのか。

 「Tell me,教えて」の後に続く質問はどれも今の私の心臓に突き刺さる。「Did you see the light? 灯りを見た?」「Did you fly? 飛んだの?」「Who did you leave behind? 誰を置いていったの?」「Were you consoled? 慰められた?」…。

 英語を聞き取れなかった質問が1つあって,展示の後半はそれが気になって集中できなかった。日本語では「突然だった?」と言っている。たぶん,Was it burst on?と言ってたのだろう。私もあなたに問いたい。それは突然だったの?

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