暑い夏の一日,アートを楽しむ至福の一日を過ごしました。まずはbunkamuraル・シネマで「魂のまなざし」を。フィンランドの画家であるヘレン・シャルフベックの生誕160年記念公開作ということで,フィンランドでは大ヒットした作品なのだそう。
2022-07-31
2022年7月,東京渋谷,映画「魂のまなざし」
2022-07-22
読んだ本,「チベット幻想奇譚」(星泉,三浦順子,海老原志穂編訳)
まえがき(三浦順子)より:「人は幻想小説を読むことで,異界を垣間見るというひそやかな愉しみを得る。でもこの「チベット幻想奇譚」のなかで描かれる異界の多くは,現実世界から乖離したものでなく,チベット文化の地層の奥深いところに,日常生活の片隅にごくあたりまえに存在するものであり,日本人にとってもどこか懐かしく,なじみ深ささえ感じられるに違いない。」
面白かった。しかし,日本中を震撼させた事件の直後に読んだために,「異界」が日常と隣り合わせであることに恐怖を覚えるばかりで,ページを繰る手がどんどん重くなっていったのは事実だ。そういう意味で心にささったのは「人殺し」(ツェリン・ノルプ),「屍鬼物語・銃」(ペマ・ツェテン),「ごみ」(ツェワン・ナムジャ)など。
2022年6月,山形の旅(5),鶴岡,致道博物館・鶴岡カトリック教会
3日目,前夜の大雨で鶴岡から新潟へ向かう特急に遅れが出ているみたいけれど,昼頃にはダイヤも回復するだろうと,予定通り午前中は鶴岡市内観光へ。…この判断が後のち影響してくるとはつゆ思わず。。
まずは致道博物館へ。「酒井忠徳と庄内藩校致道館」展が開催中でした。致道館の祭器・楽器の展示が圧巻。博物館の敷地内には酒井氏庭園ほか,民家あり,旧鶴岡警察署庁舎の洋館あり,ちょっとテーマパークみたい。江戸藩邸から移設された赤門には,おや本郷の赤門だけじゃないんだとちょっとびっくり。
気持ちのよい鶴岡公園を横目に見ながら,鶴岡カトリック教会へ。想像していよりもずっと荘厳な教会に感動。同じ敷地内にある幼稚園に響くかわいい子供たちの声を聞きながら,信者でなくても神への祈りを捧げたくなる。
日本でただ一体の「黒い聖母」像はフランス・ノルマンディー州デリブランド修道院から明治36年に由来したものだそう。様々な奇跡やエピソードを持つというマリア様のお顔はとてもとても美しいものでした。
さて,JR鶴岡駅へ戻り,定刻ダイヤに戻った特急で新潟へ向かったのですが…。羽後線は再びの大雨で足止め。2時間近く待ったものの,運転再開せずに代替バスで新潟へ向かうことに。夕刻に新潟に到着したときには力尽きて,駅前で予定外のもう1泊。新潟を観光する気力は残ってなくて翌朝の新幹線で帰ってきました。
やっと6月の旅行の記録をアップできました。コロナの波と追いかけっこのように旅をしています。
2022-07-12
2022年6月,山形の旅(4),鶴岡,鶴岡市立加茂水族館
2022年6月,山形の旅(3),鶴岡,三神合祭殿・出羽三山歴史博物館
2022-07-09
2022年6月,山形の旅(2),酒田,山居倉庫・本間美術館
2022年6月,山形の旅(1),酒田,土門拳記念館
飯森山公園内の土門拳記念館までは路線バスで。本数が少ないですが,事前に調べておけば心配ご無用!ってなわけで,すいすい旅程は進む。
特別展「木村伊兵衛と土門拳」展が7月3日までの会期で開催中でした。「ともに日本における近代写真/リアリズム写真の開拓者として知られています。しかし,その人柄や作風は大きく異なっていました」(展覧会チラシより)という2人の写真が並んでいます。
1枚の写真がまるで1篇の映画のような木村伊兵衛の作品群と,1つの被写体を徹底的に凝視するような土門拳の作品群と。木村伊兵衛の方が好きだな,という漠然とした先入観を持っていたけれど,圧倒的な迫力の写真を見ていると,どちらが好きかなんてどうでもよくなってくる。それぞれの仕方で迫ってくる写真の力を前にして,見る力を試されているよう。どうだ,と言わんばかりに。
谷口吉生の建築は美しく,端正な趣です。展示室や廊下にさりげなく置かれた椅子に腰かけて,ふうと一息つくと,観客の想いをすべてを受け止めてくれるかのようです。2時間ばかりの滞在時間を堪能して,再び路線バスで市街地へ戻りました。
2022-07-05
2022年6月,山形へ
2022-07-02
2022年6月,琉球展,エリオット・アーウィット,津田清楓展
6月にでかけた展覧会の忘備録。東京国立博物館の「琉球展」。王国の宝物類は既視感のあるものが多かった(2018年サントリー美術館の「琉球 美の宝庫」展を思い出す)けれど,アジア各国との交易の様子や,しまの人々の祈りの姿の展示は新鮮な驚きがあって面白かった。
2022-07-01
読んだ本,「パンとサーカス」(島田雅彦)
島田雅彦の新刊「パンとサーカス」(講談社 2022)読了。壮大なエンタメ小説かと思いきや,これは一体どこまでが現実のことなのか,連日のウクライナの報道を見ながら日本の行く先を考えて胸がざわつく読書となった。20年後,日本は中国の属国になる?!
「世界の敵」コントラ・ムンディは本当に現れる,否,存在するのだ,と言ったら驚く向きもあるかもしれないが,私は彼らの展覧会(!)に行ってきた。現実の話である。
というのはこの小説の新聞連載時に挿画を担当したのは6人の若手アーティストで,連載各回を次々と交代しながら自由な発想で描写したのだという。彼らのユニット名が「コントラ・ムンディ」。
4月から5月に四谷のミヅマアートギャラリーで彼らの挿画の仕事を堪能し,トークイベントで島田氏にサインをもらった。寵児と空也がギャラリーの隅に腕組みをして立っていた。マリアはサインをもらう列の最後がどこかわからず,ウロウロしていた。
「書物は魂を遠くへ飛ばすエンジンになる。古今東西の妄想家たちが練りに練った奇想天外の物語,世界に放った呪詛,自らを実験台にして掴み取った真実が,空也の目に触れるのを待っていた。ユーザーの心がけ次第で,刑務所は偉大な妄想家の養成機関になり得る。詩人や小説家,思想家には,刑務所や収容所にいた者,流刑,追放,亡命の憂き目に遭った者,生前には作品が発表されなかった者,正気を失った者などが数多くいて,おのが不遇を競っているかと思えるほどだ。」(p.521)