島田雅彦の新刊「パンとサーカス」(講談社 2022)読了。壮大なエンタメ小説かと思いきや,これは一体どこまでが現実のことなのか,連日のウクライナの報道を見ながら日本の行く先を考えて胸がざわつく読書となった。20年後,日本は中国の属国になる?!
「世界の敵」コントラ・ムンディは本当に現れる,否,存在するのだ,と言ったら驚く向きもあるかもしれないが,私は彼らの展覧会(!)に行ってきた。現実の話である。
というのはこの小説の新聞連載時に挿画を担当したのは6人の若手アーティストで,連載各回を次々と交代しながら自由な発想で描写したのだという。彼らのユニット名が「コントラ・ムンディ」。
4月から5月に四谷のミヅマアートギャラリーで彼らの挿画の仕事を堪能し,トークイベントで島田氏にサインをもらった。寵児と空也がギャラリーの隅に腕組みをして立っていた。マリアはサインをもらう列の最後がどこかわからず,ウロウロしていた。
「書物は魂を遠くへ飛ばすエンジンになる。古今東西の妄想家たちが練りに練った奇想天外の物語,世界に放った呪詛,自らを実験台にして掴み取った真実が,空也の目に触れるのを待っていた。ユーザーの心がけ次第で,刑務所は偉大な妄想家の養成機関になり得る。詩人や小説家,思想家には,刑務所や収容所にいた者,流刑,追放,亡命の憂き目に遭った者,生前には作品が発表されなかった者,正気を失った者などが数多くいて,おのが不遇を競っているかと思えるほどだ。」(p.521)
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