どんどん神格化されていくようだけれど,ちょんまげカツラをかぶってコント番組に出演したり,オペラLIFEの初演のカーテンコールで気まずそうにしていたり,そんな姿も思い出してしまう。
そんなちょっと年上の憧れの人の書棚を覗くようにこの本を読んでみた。「婦人画報」に連載されていたものを再編集したのだという。雑誌の読者層を意識しているのかいないのか,選書の幅が広くて面白い。どの項も興味深く,読んでみたい本が次から次へと登場する。
八大山人と李禹煥の項には,大胆な余白と静謐な空間に惹かれる想いが綴られる。うんうん,わかるわかると勝手に共感して,恐れ多いことだと苦笑してしまう。
「八大山人の画は,僕が今考える音楽に,大きなインスピレーションを与えてくれる。余白を埋めてしまうのではなく,空間,あるいは間,沈黙を活かすこと。音色のうつろいとしての墨の濃淡。決して幾何学的な計算からは出てこない枝,葉のフォルム。」(p.047)
「李さんの作品は自然物をいつも使っている。川辺にある石と鉄板を一緒に置いたり,ガラスの上に石を落として割ったり。自然の”余白”と人間の身体性、そして技芸との複雑な対話で李さんのアートは成り立つ。僕が自分の身体と向き合い,切実な課題をもち,”余白”の大事さを知ったのは,紛れもなく,それを実践し続けていた李さんのおかげだ。」(p.054)
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