2024-03-23

読んだ本,「散歩哲学」(島田雅彦)

 島田雅彦の新刊「散歩哲学 よく歩き,よく考える」(早川書房 2024)読了。島田雅彦の散歩論といえば,2017年の日本近代文学館での講演「歩け,歩き続けよ」が真っ先に思い浮かぶ。あの講演の内容が1冊の本にまとめられたのかと思うと,参加したことが読者としてちょっと(かなり)嬉しい。

 講演では課題図書になっていたルソーの「孤独な散歩者の夢想」を詳しく取り上げていたけれど,本書ではほとんど記述なし。なぜだろう? 社会から締め出された親父のグチ,なんて言ってたから,もっと有益(?)な図書の紹介に努めたのか,などど勘繰りたくなってくる。

 第2章「散歩する文学者たち」も面白いし,都心や郊外の実際の飲み歩き散歩コースの詳細な記録も思わず辿ってみたくなる(こんなに呑めませんが。)。最初のページのこんな一節に快哉。「移動の自由はたとえ国家や社会,支配者からそれを制限されたとしても,決して譲り渡してはならない権利である。私たちは飢餓や暴力の恐怖に晒されたら,今いる場所から逃げ出す権利を持っている。差別やいじめに遭ったら,その不愉快な境遇から抜け出す自由を持っている。散歩はその権利と自由を躊躇なく行使するための訓練となる。」(p.3「プロローグ」より) 

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