2024-04-13

2024年4月,東京田端,映画「カムイのうた」・「アイヌ神謡集」(知里幸恵)


 公開当初から気になっていた映画「カムイのうた」をようやく田端のミニシアターまで見に行く。「アイヌ神謡集」を編んだ知里幸恵をモデルとした,これは真実の物語なのだろう。2月に読んだ「和人は舟を食う」や,ジョン・バチラーの伝記「異境の使徒」でも言及される,おばの金成マツと幸恵との魂の交歓の記録とも言えるのかもしれない。

 差別を受ける場面は胸が苦しくなるが,ユーカラを記録するために幸恵がマツからローマ字を教わり,神謡を必死で書き留める場面が尊い。東京の兼田教授(金田一教授)宅で原稿を書き上げていく姿には,この仕事が彼女の成し遂げる全仕事の端緒であってほしいと願いたくなる。叶わないことと知りながら。

 この映画を見た後で「アイヌ神謡集」(知里幸恵編訳 岩波文庫 1978)を改めて手に取る。「その昔この広い北海道は,私たちの先祖の自由の天地でありました。」で始まる序文(pp.3~5)を読むだけで,幸恵の深い想いに触れることができるようだ。そして金田一京助による「知里幸恵さんのこと」(pp.159~162)の末文はあまりに哀しい。

 登別に「知里幸恵 銀のしずく記念館」というのがあるらしい。次の北海道への旅では是非立ち寄ってみたい。

0 件のコメント: