2026-01-23

読んだ本,「マルコヴァルドさんの四季」(イタロ・カルヴィーノ)

 「マルコヴァルドさんの四季」(イタロ・カルヴィーノ 関口英子訳  岩波少年文庫 2009)読了。きっかけは読み返した武満徹の「時間の園丁」の中で,ベルリンに滞在中の約1週間,音楽会に出かけるまでのホテルでの時間をほとんどこの本を読んで過ごしたという逸話を読んだこと。(彼が読んだのは英訳本だけど。)「カルヴィーノの記述にはユーモアが充溢し,読む間笑いが止まらず,時間が経つのを忘れてしまうほどだった。それでいて読後の余韻は長く,また深く重い。」(「時間の園丁」p.48)

 邦訳が出ているので嬉しい。岩波少年文庫に入っているけれど,大人が読んでこそ,マルコヴァルドさんという貧しい労働者の眼を通した自然への畏怖,荒廃した都会と人間への批判,それらの先にある人間存在を肯定する美しい魂の存在などなどに深く共感するのではないだろうか。

 20編のどの一つも美しい。とりわけ私の心には「まちがった停留所」のちょっと不穏でシュールな感じが面白く響いた。バス停を探し続けたマルコヴァルドさんが歩道から飛び降りて,乗り込んだのは,インドへ旅立つ飛行機だった。家に帰るための停留所をずっと探し続けて,運ばれていく先は見知らぬ世界だったのだ。でも彼はそのまま窓の外を眺めて飛び続ける。

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