数年前に金沢のアンティーク・フェルメールで買った古い写真立てです。手にとってよく見るとほこりが目立っていたので,亜麻仁油で磨いてみることにしました。
まずはそっと水拭き,乾拭きをして完全に乾くのを待ち,それから亜麻仁油を小さな入れ物に少しとり,フェルメールの店主がしていたように麺棒の先を浸します。縁の細かい装飾部分も丁寧に磨いてきれいになりました。
この写真立てにぴったりのイメージがどうにも思いつかず,ガラス板の下には黒い布を入れています。光がよい具合で反射してぼんやりした鏡のようです。
いつごろのものか,どこのものか,ちゃんと聞いたはずなのにすっかり忘れてしまいました。やはり,「きれい」とか「好き」だけではなくきちんと情報を整理しておきたいもの。
引用の引用ですが,ウラジミール・ナボコフが1959年のSports Illustlated誌にこんなコメントを寄せているそうです。 I cannot separate the aesthetic pleasure of seeing a butterfly and the
scientific pleasure of knowing what it is.「私は,蝶を見ることの審美的な喜びと,それがどういう種かを知ることの科学的な喜びとを区別できない。」
これから「美しい」と思うものを眼にしたときにはこの言葉を思い出すことにしよう,と静かな艶をたたえるようになった写真立てを見ながら心に決めました。
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