横浜美術館で始まったプーシキン美術館展(9月16日まで)の夜間特別観覧会招待に当選,いそいそと桜木町へ。美術館の正面に大きな商業施設ができて周辺は着実に変化しているのだけれど,いつもの通り桜木町駅から右手に日本丸や観覧車を眺めながら美術館へ向います。
今回の展覧会のプーシキン美術館は「知る人ぞ知るフランス絵画の宝庫」(展覧会資料より)なのだとか。ミニレクチャーで歴代皇帝や19世紀の大商人によるコレクションの形成と,エルミタージュ美術館と並ぶ規模の国立美術館への足取りや展覧会の見どころなどをコンパクトに聞いてから会場へ。(担当の主任学芸員の松永氏は,キャパ展のブログによればロバート・キャパ似と書いてあったけど,ほんとに似てる。あ,これは脱線。)
17世紀古典主義から20世紀のピカソやマチスへという編年体のシンプルな構成で,人物表現にスポットがあたっています。傑作ばかりですが印象が強かったものを,忘備録的に。神話を題材にしたダヴィッドの「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」(習作)は,のちの「マラーの死」を連想する。ヴェルネ「マムルーク」を見て「マムルーク朝」の意味とイメージを映像として認識する。アングル「聖杯の前の聖母」の前では言葉を失う。ゴーギャン「エイアハ・オヒパ(働くなかれ)」は美しい男性が寛ぐ姿。解説文には「両性具有的な」魅力と書いてあり,なるほどと思う。
(夜間特別観覧会に際して特別に撮影許可されました) |
ところで展覧会のHPには島田雅彦の書き下ろした「名画のたどり着く先」という4つのストーリーの映像がアップされています。さすがロシアの美術館ときたら島田雅彦だね,という内容にわくわく。ドラクロワ「難破して」は,バイロンの叙事詩「ドン・ジュアン」に着想を得た「アタッシュケースほどの大きさ」のこの1枚の魅力を語る5分ほどのストーリー。島田ファンにはたまりません。ナンパ師が難破する,なんてくだりにも決して脱力したり(!)しないのである。
ゆっくり楽しんで美術館の外に出ると外はすっかり夏の夜。入口外壁のポスター。ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」がにっこりと見送ってくれます。幸せな笑顔にこちらもつい顔がほころびます。
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