2013-07-04

2013年6月,東京上野,夏目漱石の美術世界展(芸大美術館)・魔性の女 挿絵展(弥生美術館)

 暑くなった一日,上野にでかけて芸大美術館で開催中の「夏目漱石の美術世界」展を見てきました。NHK日曜美術館やBSの番組でも大きく取り上げられていて,会場は大変な混雑。
 
 「漱石の文学作品や美術批評に登場する画家,作品を可能な限り集めてみることを試みます」(展覧会チラシより)というこの展覧会。それぞれの作品が漱石のどの作品にどのように引用されていたのか,展示されている説明文を丁寧に読みながら会場を廻ります。
 
 展示されているのは「伊藤若冲,渡辺崋山,ターナー,ミレイ,青木繁,黒田清輝,横山大観といった古今東西の画家たち」(展覧会チラシより)です。酒井抱一の「月に秋草図屏風」は短い展示期間で,さすがに存在感たっぷり。「門」に登場するということですが,一体いつ読んだのだったか,そんな場面があったことなどはるか忘却の彼方。
 そして今回ぜひ見たかったのがウォーターハウスJ.W. Waterhouseの「シャロットの女」と「人魚」の2点。「人魚」は「三四郎」に登場します。顔を寄せ合って画帳の「人魚」を覗きこむ三四郎と美禰子。二人の身体の距離感が絶妙に伝わって,とても肉感的な場面に思えます。そうか,二人はこの絵を見ていたのかと,Waterhouseの作品の前で明治時代にタイムスリップした気分に。
 
 もう一つのアーサー王伝説の「シャロットの女」は,漱石の「薤露行(かいろこう)」の関連作品としての展示。このリーズ市立美術館所蔵の「シャロットの女」そのものが作品に登場するわけではないようです。そもそも「薤露行」とは聞いたことがない。これはこのまま通り過ぎるわけにはいきませぬ,というわけで早速「薤露行」とその関連書籍を読むことに。詳細についてはまた後日あらためて。
 
 さて,芸大美術館のレストランも学食も大変な混雑。遅めの昼食は谷中方面に少し歩いてカヤバコーヒーに立ち寄る。店の前のネムノキの花。そして根津方面にまた少し歩いて弥生美術館で6月30日まで開催されていた「魔性の女 挿絵展」に向かいました。明治末から大正,昭和初期にかけて日本の文学に登場した「魔性の女」を取り上げた展覧会。漱石展を見たあとだし,三四郎池にもすぐ近いことだし,すっかり気分は明治の女である(?)。
 少し前にテレビ東京の「お宝鑑定団」で取り上げられていた橘小夢(たちばなさゆめ)の原画展示に興奮。谷崎潤一郎の「刺青」の挿絵である「刺青」の妖しい美しさに足がくぎ付けになりました。濃密な一日を堪能して,最後は根津の古書店タナカホンヤに立ち寄って帰路につきました。タナカホンヤで買った本についてもまた後日。

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