東京都写真美術館で開催中の「没後百年 日本写真の開拓者 下岡蓮杖」展を見てきました。写真美術館の静かな部屋で古写真を見るのは大好き。古写真の展覧会はたいてい複数の写真家の作品で構成されているので,下岡蓮杖一人だけの回顧展という形の展覧会は珍しいのでは。
会場はとにかく盛りだくさんの情報があふれていて,じっくり見始めるとかなり時間がかかります。なんでも「写真事歴」(山口才一郎筆記,明治27年,写真新報社)という本人の口述筆記による伝記の信憑性が最近まで疑われていたとかで,近年その真実が確認されたことで,今まで謎が多かった蓮杖の生涯が明らかになったのだそう。
というわけで,会場の壁にはその「写真事歴」からの文章の抜粋とその英訳が所狭しとプリントされていて,ちょっと気忙しいけれど面白い。絵師として身をたてようとして写真に出会い,技術を獲得して写真師として隆盛を極めた人物の,一筋縄ではいかない人間像が浮かんできます。
サイズが小さい古写真を1枚1枚のぞきこむようにして見ていると,写真館にでかけて写真という新しいメディアによって自己を対象化しようとした当時の老若男女が今もそこにいるようです。「閨で囲碁を打つ二人」なんていう写真にはちょっとびっくり。しどけないポーズの女性が「何見てるのよ」とばかりにこちらをにらんでいます。時空を超えて思わず「ひえっ!ごめんなさい!」という気分になります。
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