2014-07-26

2014年7月,山陰の旅(5),出雲弥生の森博物館,湯町窯・出西窯

 旅の最後に向かったのは出西窯と,そこからほど近い出雲弥生の森博物館。西谷墳墓群史跡公園の中にあります。なかなかマニアックなチョイスは古代史の先生のご推薦。「四隅(よすみ)突出型遺跡」である王墓・西谷3号墓を出土品と模型で展示しているのですが,その精巧な模型や,なかなかショッキングな復元模型など,見応え満点。とりわけガラス製の勾玉のその美しさと言ったら。
 そのガラス勾玉を顔に,四隅型遺跡を身体にもつのがマスコットキャラクターのよすみちゃん(!)。以前,何かの雑誌で全国の博物館のキャラクター特集の記事を見たときに,このよすみちゃんが印象に残っていて,今回の旅行で件の先生と話したとき,「あ!あのよすみちゃんの!」となり,是非訪れてみたかったのです(あまりに非学問的)。ショップでよすみちゃんのストラップやクッキーも購入してご満悦。いよいよ旅も終わり,空港へと向かいます。
 
 今回は,今年の春にウン十年ぶりに再会した米子在住の友人であるY子さんに本当にお世話になりました。ちょっと変てこ(自覚はしてる)な興味に付き合っていただいて,あちらこちらへと運転していただきました。本当に人の縁こそが人生の宝物です。本当にありがとうございました。
 
 さて,最後に湯町窯と出西窯で買った素敵な器たちもこの旅の記憶に残しておくことにします。左が湯町窯,右がブルーが美しい出西窯。


2014年7月,山陰の旅(4),出雲大社,古代出雲歴史博物館

 旅の2日目は,前日とはうって変わって雨模様。初日の快晴に,日ごろの行いだわ,と喜んでいたのですが,これじゃあ私の日々はプラスマイナスゼロってことか。
 
 それはさておき,宿泊した玉造温泉からほど近い湯町窯で素敵な角皿を購入し,次に向かったのは出雲大社です。途中,高速道路から見る山脈に雲がかかる様子はまさに「八雲たつ」出雲の神秘的な姿で,これぞ神々の国と感動。旅先の雨もまたよいものと思えてきました。
 海岸線からのアプローチで,稲佐の浜も左手に見ながら出雲大社へ。かなり雨脚が強いものの,たくさんの観光客で賑わっています。縁結びということで,熱心にお願いしている若い女性もたくさん。私も人の世のよき縁をお願いしよう。よく写真に使われている大注連縄を下から見るとこんな感じ。
 そして楽しみにしていた古代出雲歴史博物館へと向かいます。お社からは徒歩5分くらいです。その展示はとにかく圧巻,の一言でした。2000年から2001年に発掘された巨大柱と,その発掘調査の成果による「巨大神殿,出雲大社」の展示はなんともドラマチックです。親切なイヤホンガイドを聴きながら古代のロマンにどっぷりひたる。
 
 そしてもう一つ,荒神谷遺跡から発掘された大量の青銅器の展示に圧倒されます。358本の銅剣が整然と埋蔵されていた様子,銅矛と銅鐸が一緒に埋められていたという事実,これらは発掘時に考古学者たちにとって大事件だったということ。知らなかったことばかりです。美しい写真と詳しい解説が親切な図録でこの夏,しっかり勉強してみよう。神話の再現映像などもとても楽しい。また出雲大社のおまつりの時期などに是非再訪したいものです。
 出雲駅伝の出発地点などを確認しながらおいしい出雲そばをいただいて,次は出西窯の窯元と,出雲弥生の森博物館に向かいます。

2014-07-21

2014年7月,山陰の旅(3)島根松江,Objectsで買ったもの,白磁のカップ

 初めて訪れた松江は静かな城下町で,私が生まれ育った街の雰囲気を思い出し,どことなく懐かしさを感じます。川沿いにあるObjectsという店に立ち寄りました。器の雑誌で雲南市三刀屋町の白磁工房に惹かれたのですが,少し距離がありそうなので,この工房の作品を扱っている店を探してたどり着いたのがこのお店。

 お目当ての白磁工房の作家は石飛勝久さんと石飛勲さん。この日は勲さん作のきれいなカップ&ソーサーを購入。実際に使ってみると,お茶の色が美しく映えるだけでなく,驚くほど飲み心地(というのか)がよいのです。手になじむ感じと口元にあたる感触にうっとり。大ファンになりました。
  HPでチェックしていた李朝の螺鈿細工の箱も見せてもらい,素晴らしい美しさでした。まさに眼福です。旅先でこんな素敵なお店に出会えるのはほんとに楽しい。運転してくれてどこにでも連れていってくれた友人に感謝感謝です。 
 

2014-07-20

2014年7月,山陰の旅(2)島根松江,島根県立美術館,小泉八雲旧居

 松江に向かい,島根県立美術館を訪れました。ここは宍道湖に沈む夕日を愛でるのが有名。到着したのは午後の遅い時間でしたが,日が長い時期なので,日没まではかなり時間があります。今回は傾きかけた陽を写す湖面が美しい宍道湖を楽しむことにします。
 湖畔にはこれも有名な籔内佐斗司のブロンズ「宍道湖うさぎ」が並んでいて,前から2番目のウサギをなでると幸せになれるのだとか。件のウサギの背中はつるつるになってました。今回の旅ではあちらこちらに「縁結びスポット」的な場所があって,にぎわってました。やっぱり他力本願に限りますね,こういうことは(独断)。
 館内ではコレクション展を楽しみます。2階の5室はどの部屋もスケールが大きく,ボリュームたっぷりの常設展示です。見応えたっぷりの日本画や郷土のやきものなどに加えて,第4室の写真の部屋では奈良原一高の「偉大なる午後」展が開催中で,思わず小躍り。写真展関連の情報ではなかなか常設展示室の展示までチェックできていなかったので,この偶然には感激です。
 
 「スペイン・偉大なる午後」から112点のヴィンテージプリントが展示されています。大きく引き伸ばされたイメージもあり,中世にタイムスリップしたようなマタドールたちと闘牛たちの神聖な美しさに思わずため息です。いつかスペインもゆっくり旅をしたい。
 
 ショップで幸運のしじみや夕日のキャンディー(金太郎飴になってる)など楽しいグッズを購入して,次は松江の中心部へ。小泉八雲の記念館と旧居を訪ねてみました。ほほう,小泉八雲はこういう生涯を送ったのか。知らないことばかりで勉強になりました。三男の小泉清はフォービズムの画家として生きた人だそう。島根県立美術館に作品が展示されていました。合わせて見ることができて面白かった。解説のパンフレットには「三男清は西洋と東洋の血の戦いに苦悩」した,という記述があって,ちょっと気になる。この人の生涯を調べてみよう。旧居は端正な佇まいの日本家屋です。庭園の蓮池。モノクロで撮ってみました。

さて,この日の宿は玉造温泉!温泉に向かう前に,ネットで見つけて気になっていた,器と古いものを扱うObjectsというお店に向かうことにします。

2014-07-17

2014年7月,山陰の旅(1)鳥取伯耆町,植田正治写真美術館


一度は行ってみたい美術館の一つだった植田正治写真美術館。念願かなってとてもうれしい。米子鬼太郎空港に迎えに来てくれた友人の運転で,大山のふもと伯耆町に向かいます。
 
  のどかな田園風景の中に突然現れる硬質な建物は,高松伸の設計です。様々なメディアからの予備知識があったとはいえ,巨大レンズを備えて壁面に「逆さ大山」が投影される映像展示室や,展示棟の間から見る美しい山の姿と静かな水面など,想像以上の空間体験に興奮です。
 1階の常設展示室では植田正治の生涯をたどるように代表作が並び,意外と,と言っては失礼だけれど,観客の数が多くてちょっと驚く。そして昨年の東京都写真美術館での展覧会にも出品されていた1枚,「風景の光景」シリーズの腐ったリンゴを写した写真の前で足が止まります。
 
 写美の展示ではジャック・アンリ・ラルティーグの躍動感に引きずられていたのか,このリンゴの写真にはそれほど惹かれなかったのですが,植田正治の仕事の流れの中でこの写真にたどり着くと,何か切迫した迫力みたいなものを感じてしまう。このリンゴはそこにあったものなのか,写真家が意図してそこに置いたものなのか。なぜ,そこに腐ったリンゴを置いてそれを撮影したのか。そんな疑問は愚問だ,といわんばかりの完全な画面に圧倒されます。
 
 東京の乾燥した冬に見るのと,山陰の夏の湿気の中で見るのとでは,私の思考回路も別の動きをするのかもしれないな,と妙に納得して美術館をあとにすることにして,次は松江に向かいます。

2014-07-14

2014年7月,米子・松江・出雲の旅

 台風一過の週末を利用して,米子・松江・出雲へ行ってきました。米子では以前から行きたかった植田正治写真美術館,松江では島根県立美術館ですばらしい常設展示,出雲では雨に降られたものの,八雲たつ神秘的な姿の出雲大社。歴史博物館では荒神谷遺跡から出土の青銅器の美しい展示に感動です。
 
 そして島根の素敵な民窯を訪ねて湯町窯と出西窯へも。大充実の楽しかった旅の記憶をゆっくりアップしていきます。

2014-07-06

2014年7月,東京恵比寿,佐藤時啓展

 新しい職場で日々をやり過ごし(やり過ごす,という表現がぴったりの職業意識),なんとなくリズムがつかめてきたと思ったらもう7月になっています。本を読んだり展覧会に出掛けたりの時間を取り戻さなきゃ,と思っているところです。
 東京都写真美術館で開催されている佐藤時啓写真展を見てきました。タイトルは「光-呼吸 そこにいる,そこにいない」。この人の写真は以前から不思議に思っていて,鏡やペンライトを使って光の軌跡が映り込んでいるのだけれど,その鏡やペンライトはどうやって動かしているのだろう。
 
 答えはわりかし簡単で,長時間露光によって撮影されているから,動く人や走る車は写っていないのだということ。「光の強いものと静止しているものだけが写真に写る」という,単なる技術的な説明に過ぎない記述になぜか心がざわつく。暗いものと動くものは写らないんだ,と反芻してみる。
 
 人が動いた結果の白い点や線が,まったく人の気配のない画面に焼き付けられているという不思議。雪原の写真にはなぜ足跡が残っていないのだろうという不思議。
 
 会場で配られるガイドブックに,写真家本人への10の質問が掲載されていて,「普段の生活ではどんなときに写真を撮りますか」という質問には「カメラが手軽になったので,綺麗だな,とか面白いな,と思ったときにはいつでも撮ります。また記念写真もよく撮ります」と答えています。なんだ,普通の人と同じだな,とほっとするような,肩すかしをくらったような。