新しい職場で日々をやり過ごし(やり過ごす,という表現がぴったりの職業意識),なんとなくリズムがつかめてきたと思ったらもう7月になっています。本を読んだり展覧会に出掛けたりの時間を取り戻さなきゃ,と思っているところです。
東京都写真美術館で開催されている佐藤時啓写真展を見てきました。タイトルは「光-呼吸 そこにいる,そこにいない」。この人の写真は以前から不思議に思っていて,鏡やペンライトを使って光の軌跡が映り込んでいるのだけれど,その鏡やペンライトはどうやって動かしているのだろう。
答えはわりかし簡単で,長時間露光によって撮影されているから,動く人や走る車は写っていないのだということ。「光の強いものと静止しているものだけが写真に写る」という,単なる技術的な説明に過ぎない記述になぜか心がざわつく。暗いものと動くものは写らないんだ,と反芻してみる。
人が動いた結果の白い点や線が,まったく人の気配のない画面に焼き付けられているという不思議。雪原の写真にはなぜ足跡が残っていないのだろうという不思議。
会場で配られるガイドブックに,写真家本人への10の質問が掲載されていて,「普段の生活ではどんなときに写真を撮りますか」という質問には「カメラが手軽になったので,綺麗だな,とか面白いな,と思ったときにはいつでも撮ります。また記念写真もよく撮ります」と答えています。なんだ,普通の人と同じだな,とほっとするような,肩すかしをくらったような。
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