今年は春から案件が立て込んでしまい,合間合間に息抜きと称してあちこち出掛けた記録をほとんど残していなかったので,まとめて忘備録としてアップしています(怒涛の勢い)。仕事もこれくらい精力的にこなせればストレスもたまらないんだけど。
4月以降に見たお能の公演を順番に。まず,4月櫻間会例会で仕舞「小塩」と能「葵上」。「葵上」は般若物の一つで,御息所の怨霊が怖ろしい。(4月・6月セルリタンタワー能楽堂)
6月櫻間会例会では仕舞「胡蝶」と右陣さんのシテで能「弱法師」。親子の情愛というと美しいけれど,盲目となった息子である弱法師の物狂いの有様があまりに哀しい。右陣さんの美しい所作に涙ぐむ観客の姿もむべなるかな。
7月櫻間右陣之会では右陣さんのシテで「海人」,伊藤真也さんのシテで「道成寺」。「海人」は「懐中之舞」という,母である龍女が経巻を懐に収めて舞う形。「道成寺」は舞台上に鐘が運び込まれ,白拍子が落下してくるその鐘の真下に飛び込む場面に思わず興奮。蛇体から発せられる暗い怨念は水底にたまるそれのようでもあり,ただただ恐ろしい。狂言は万作・萬斎で「簸屑」。(国立能楽堂)
8月京都にて大文字送り火能として「海人 変成男子」。「変成男子」では後シテ(金剛永謹)が通常は龍女のところ,男の龍王になる。宝珠を命がけで奪い取る場面が名高いらしいが,ワキ方(従臣)の福王和幸さんがあまりに素敵で,ほかのことはそっちのけになる。イケメン・ミーハー魂に火がつく。(金剛能楽堂)
9月「平家物語の世界」で右陣さんシテ「景清」。盲目の父と娘の別れの場面が切ない。地謡の「さらばよ止る行くぞとのただ一声を聞き残す,これぞ親子の形見なる」にウルっとくる。狂言は萬斎で「三人片輪」。(横浜能楽堂)
9月金春会定期能の番組のうち,最後の「融」にぎりぎり間に合う。シテ桜間右陣,ワキ福王和幸という最高(独断)の組み合わせ。福王さんの旅僧姿があまりに美しく,ほかのことはそっちのけになる。(国立能楽堂)
9月新作再演の会で「紅天女」。シテ梅若玄祥・ワキ福王和幸。およそ少女マンガとは数十年縁がなく,美内すずえ「ガラスの仮面」はタイトルを聞いたことがある,というくらいの知識しかない。劇中劇が新作能として上演されたものの再演ということ。いかにも能の世界として楽しめた。間狂言はメッセージがストレートすぎて,ちょっときつい印象。(国立能楽堂)
9月に雑司ヶ谷の古本市で「お能の見方」(白洲正子著,新潮社 1993)を発見して購入しました。
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