三菱一号館美術館で開催中のジュリア・マーガレット・キャメロンの写真展を見てきました。ロンドンのV&A美術館が企画した国際巡回展ということ。一号館美術館で写真の展覧会を見るのはあまり記憶にないけれど,なるほどここの展示室にぴったり,という感じの展覧会。展示室はこんな感じ。V&Aのphotography roomの雰囲気を再現しているようです。
この女性がカメラを手にしたのは1863年ということ。まさに写真黎明期に,芸術としての写真に情熱を注いだ人生に感動。ピクチャレスクな写真の数々を目のあたりにして,彼女にとってカメラは画家の絵筆のようなものだったわけだ,と納得。写真術を身につけたのは48歳のときというから,自分の表現したいものを表現する手段を得て,どれほど嬉しかったことだろう。
聖母や幻想を主題とした作品をV&Aは当時の批評家たちの攻撃をものともせずに所蔵したらしい。あの美しい美術館の写真室を思い出しながら,手元のデジカメでカシャカシャと会場の写真を撮りながら,19世紀に生きた一人の女性の「表現する悦び」に羨望の想いを抱く。
印象に残ったものをいくつか。'Yes or No?'というタイトルの1枚はヴィクトリア朝に人気のあった風俗画の主題のプロポーズを表しているということ。Robert Browningの肖像は,おお,上田敏訳の「春の朝」の詩人ではないの!「神,そらに知ろしめす。すべて世は事も無し。」と諳んじた学生時代を思い出しました。God's in his heaven. All's right with the world. ほかに,キャメロンの写真が挿図として装幀されたテニスンの詩集なども。
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