2019-03-24

2019年3月,東京初台,「石川直樹 この星の光の地図を写す」

 世界中を旅する写真家,というイメージの石川直樹の写真展を見に行く。最終日も近く,会場内は混雑していた。若い人も年配の人も男性も女性も石川直樹の撮った世界に見入っている。すべてフィルム撮影だという。
 南極も北極も,ポリネシアもヒマラヤも,写真家が見つめる世界はもちろん美しく情熱的で観客の心を捉えるものばかりだ。ただ,ふと思うのは,彼は何に導かれて「そこ」へ行くのだろう,ということ。干してあるシロクマの毛皮や一面の氷の世界,先史時代の壁画,そうかと思えばポリネシアの漁をする人々の逞しい肉体。
 
 共通するものは,地球への愛なのか?というおよそ安易で単純な答えを用意して,展示の最後の「石川直樹の部屋」に足を踏み入れたとき,頭をガツンとやられた。愛読書の本棚が展示されている!そして「僕の旅は本から始まる」という自筆のメモ!
 
 ああ,そうか。1冊の本を読んで次から次へと導かれていくあの興奮,それがそのままこの写真展を見る悦びになっている! 
 
 かなり興奮して,本棚を隅から隅まで拝見。楽しかった。ル・クレジオ「地上の見知らぬ少年」には数えきれない付箋が挟んである。「海を見たことがなかった少年」と同時期に書かれたものらしい。スーザン・ソンタグの著書も多い。思わず読んでみたくなる本ばかり。世界と人をつなぐものは言葉なのだ,と何やら満ち足りた気持ちを抱いて会場を後にした。 

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