2023-04-19

読んだ本,「親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語」(吉原真里)

 「親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語」(吉原真里著 アルテスパブリッシング  2022)を読了。朝日新聞の書評を読んで面白そう,と手に取ってみた。レナード・バーンスタインに何十年にもわたり手紙を送り続けた2人の日本人。それぞれのレニーに対する真摯な愛の姿に心打たれる。そしてそれに加えて筆者のこの本への真摯な熱量にも。

 二人のプライベートな書簡を公表することに関しては最終章コーダが詳細を教えてくれる。深い躊躇と熟考の末だったことがわかり,寧ろバーンスタインとその家族を守り通す筆者の力量に驚く。

 書簡が語る愛の物語と同じくらい,コーダに綴られた筆者・吉原真里の文章は心打つ内容だ。「個人のミクロな物語は,歴史のマクロな構造のなかで織りなされる。/天野と橋本のそれぞれがバーンスタインと育んだかけがえのない関係。それは,戦後の日米関係史,音楽産業の発展,そして世界の政治関係の流れのなかでこそ進展していった。(略)それと同時に,ふたりがバーンスタイン亡きあと三十年経ったいまでも抱きつづける,マエストロとその芸術への深い愛は,そうした歴史や構造を超越したものである。それを可能にしたのはまさに,音楽,そして芸術の力であろう。」(pp.412-413)

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