いよいよ会期終了も間近というところで,ようやく東京都美術館にエル・グレコ展を見にでかけました。強い風の翌日,ソメイヨシノはほとんど葉桜でしたが,八重の桜の美しい上野公園はまだまだたくさんの人出。エル・グレコ展の会場もかなりの混雑でした。欅の新緑が建物の外壁に映えてまぶしい。
テレビや各種のメディアで情報や画像をよく目にしていたせいか,会場を歩いていると既視感を覚えて,ついつい足早になってしまう。信仰を持たない身には,やはり意味の「わかりやすい」画が魅力的に映ります。展覧会第1章の肖像画はどれも強烈な存在感。「白貂の毛皮をまとう貴婦人」の美しさは何に喩えればよいのだろう。宗教画では「受胎告知」や「悔悛するマグダラのマリア」などなど。
「瞑想する聖フランチェスコと修道士レオ」はどんな画題なのか知りもせず,しかし,修道士に差し出された髑髏はそのまま絵を観るものに突きつけられているようでもあり,「死を想え」と静かに諭されているようで,胸にひびきます。
今展のハイライトの「無原罪のお宿り」の意味も今まで知りませんでした。たくさんの人が,まさに「聖なるもの」を見つめるまなざしでこの絵の前に膝をつくように屈んでいたのですが,私はこの絵の前で祈りを捧げる身ぶりをする覚悟を持ち合わせていない。ああ,なんて美しい絵だと遠巻きに眺めて,そして出口へと向かいました。
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