2013-04-19

読んだ本,「貴婦人と一角獣」(トレイシー・シュヴァリエ)

 もうすぐ「貴婦人と一角獣」の展覧会が始まります。書店で「フランスの至宝,奇跡の初来日 名宝タピスリーに秘められた禁断の愛の物語」という帯の惹句を見て,予備知識を仕入れるのにちょうどよさそうと思って購入。白水社から出ている「海外小説の誘惑」シリーズの1冊です(木下哲夫訳)。
 読み始めてすぐに,ん?となる。美術史的な解説とか来歴ではなく,「この物語は虚構ではあるけれども,タピスリー《貴婦人と一角獣》に関する妥当な推測に基づいている」(著者注,p331より引用)というフィクションでした。
 
 訳者あとがきを読むと,著者のトレイシー・シュヴァリエは,映画にもなった小説「真珠の耳飾りの少女」の作者ということ。なるほど,この「貴婦人と一角獣」も映画化されると面白そう。絵師ニコラの女たらしぶりや,貴族の娘クロード,工房の娘アリエノールのキャラクター設定も,わずかな史実だけをもとにして,よくぞこれだけのストーリーを組み立てられるなあ,と感心する。登場人物それぞれが一人称で物語を紡いでいくのですが,ニコラの章は少々お行儀(!)が悪いようでございます。
 
 とはいえ,中世の織物の制作方法や,工房と組合の関係,教会の行事などなど,「教養小説」の趣も備えていて,あっと言うまに読み終えました。国立新美術館で始まる展覧会が楽しみ。
 

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