19世紀後半に明治維新政府が教育制度に西洋音楽を導入して以来,「芸術文化の諸領域と連動し,さまざまな表情を見せつつ,めざましい発展を遂げ」た日本の音楽文化を,「視覚的に再構成する初めての試み」(カッコ内は展覧会チラシより)ということ。
美術館で「観る」音楽というわけで,やはり視覚的に面白いものが印象に残ります。これぞ大正ロマン,という「セノオ楽譜」の装丁がとても楽しい。竹久夢二,中山晋平など。
「戦後から21世紀へ」のコーナーでは武満徹の自筆楽譜の世界に惹きこまれます。この人にとって音楽とは一体何だったのか,自らの存在する宇宙の原理そのものがこの五線譜の上に描かれているようです。今回,瀧口修造の詩に導かれた「遮られない休息1」の楽譜も展示されていて,美しいピアノの旋律がどこか天上から流れてくるようでした。1は「ゆっくりと悲しく語りかけるように」。
さて,いかに「視覚的」とはいえ,近代音楽の歴史を辿る説明のパネルも数多く,ゆっくりと時間をかけて会場を回って,にわかに音楽知識のあれこれを仕入れました。日本でのベートーベン第九の初演についての興味深いエピソードなども。
そして第九といえば,今年はある合唱団に参加させてもらって,先日舞台に立ちました。人生で一度やってみたかった年末の第九合唱。8月から週1回のペースで練習し,何とか本番に。呪文のように覚えたドイツ語(原詩:シラー)も,日本語に直すとしみじみ,凄い(何が,と言われると困るのだけど)。
歓喜よ,美しい神々の火花よ,天上の楽園の乙女よ!
われら情熱に溢れ,崇高な,あなたの聖所に足をふみ入れる。
あなたの奇しき力は,時の流れが厳しく切り離したものを,再び結び合わせ,
あなたの柔らかい翼の留まるところ,すべての人びとは兄弟となる。
(カワイ版BEETHOVEN “An die Freude”より)
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