2014-05-06

2014年5月,東京駒場,「《終わりなきパリ》,そしてポエジー」展

 東京大学駒場博物館で開催中の「《終わりなきパリ》,そしてポエジー」展を見てきました。これはアルベルト・ジャコメッティとパリの版画展です。ジャコメッティの版画集《終わりなきパリ》連作を,「同時代の詩人たちの言葉との響き合いの空間に解き放つ」展示(チラシより)。博物館ファサードの装飾が美しい。
  版画がぐるりと展示された壁の一面に,プロジェクションで詩人の言葉が映し出され,ときおりパリの街の音が駆け抜けていくという演出です。かしゃ,という音とともに映し出される詩篇をじっくりと眺めてしまう。フランス語詩の翻訳は会場入り口で配布されます。

 ボードレールやランボー。レイモン・ラディゲの「親愛なる友よ,ただちに錨をあげよう。インク壷は海のように悲しい」。ジャコメッティ自身の言葉,「いたるところこの限りない豊かさ,いたるところ」は壁面の版画のストイックな描線とまさに「響き合い」ます。

 この展覧会のチーフ・キュレーターは東大教授の小林康夫氏。アシスタント・キュレーターの桑田光平氏が詩句のパッセージの選定と訳を担当したということ。小林教授のちょっと柔らかめ(?)のコメントが展示室のあちこちに掲示されていて,とても楽しい。パリ・パサージュのコーナーはマネのオランピアの版画に始まり,ゴーギャン,ニコラ・ド・スタールなど。今井俊満や菅井汲の作品もあって盛りだくさんです。

 関連書籍のプリントには「光のオペラ」(小林康夫著,筑摩書房 1994)もラインアップされています。「ジャコメッティ的凝視」という論考が所収されているとのこと。実はこの本は著者署名本(しかも献呈!)を持っているのです(えへん!)。しかし,中身は忘却の彼方。早速読み返すことにします。

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