2015-09-27

2015年8月,フェルメールで買ったもの,エナメル彩のトレー

  今年の夏にアンティーク・フェルメール(金沢)で買ったトレー(約11センチ×7センチ)。18世紀後半のイギリスのものということ。お店で見つけたときに既視感があって,前から気になっていたものだったかなあ,と思ったらお店のHPのトップページに写真が載っていたものでした。ようこそ我が家へ,という感じ。
  朱色に近い赤の色が深く,部屋の片隅にあっても潔い勢いというか,その存在感が気持ちよいトレーです。ぱっと見たときには皮革かと思ったら,意外にも金属製で,でもブリキとは言いたくないなあ。ブリキの語源はオランダ語のblikという語らしいので(某ウィキペディアより),blikのトレーということにしよう。
 
 金彩が精緻で美しいのですが,それと同じくらいに表面の傷にも目を奪われます。使っているうちについた傷とは思えなくて,何か意味がありそう。すっかり秋の空気に入れ替わった夜に,ぼんやりとその線に視線を落としていると,時間がたつのを忘れます。 

2015年8月,京都の夏(5),大阪へ・国立民族学博物館

 京都からの帰路は伊丹空港から羽田への空の便を選択。京都駅八条口から伊丹空港へのバス便が便利です。民博は南アジア展示がリニューアルされたとのことで,じっくり時間をかけて見学しました。

 「躍動する南アジア」「宗教文化」「生態となりわい」「都市の大衆文化」「染織の伝統と現代」5つのセクションで構成されています。南アジアの人々の価値観を形成したさまざまな宗教が影響しあった宗教文化の紹介に惹かれる。「多様性」という言葉が具現化されたような空間です。
  2014年のインドへの旅は,世界遺産を駆け足でめぐる観光の定番コースだったので,次の機会があれば仏教遺跡をめぐる旅をしてみたい。以前はあまり興味のなかった仏教史にも食指が動き,この秋は某大学公開講座の空思想を学ぶ講座に申し込みました。知識ゼロからのスタートなのでかなり不安ですが,また報告など。

 中国地域の文化セクションではこんな美しい切り絵を発見。昨年と今年のインド・中国旅行をおさらいするようなとても楽しい時間をすごし,伊丹空港へと向かいました。これで今年の短い夏の休暇はおしまい。機上で日常へ戻る間,ちょっとため息がまじる。

2015-09-23

2015年8月,京都の夏(4),金剛能楽堂・送り火

  古書市の次は寺町通りから夷川通りへ向かい,いくつかお目当てのアンティーク・骨董店をぶらぶらするも,ぴんとくるものに一つも出会えず。すると突然,バケツをひっくり返したような雨になりました。夜は五山の送り火なのに!しばし雨宿りをしていると雨は上がりましたが,チケットをおさえた金剛能楽堂の「大文字送り火能~蝋燭能~」の時間が迫ってきました。

 急いで御所の前にある金剛能楽堂へ。端正な佇まいの建物です。中庭の池に鯉が泳ぐ。
  この日は「海人 変成男子」という曲を見たのですが,ここのところお能の公演にはまっていて,近いうちにまとめてもろもろアップします。実はこの日,衝撃的な出会いがあったのです(いつものミーハーです)。ワキ方福王流の福王和幸さん。その姿にほれぼれしました。ところで蝋燭の灯りだけで演じるのかと思いきや,さすがにそれじゃあ暗いというわけでちゃんと照明もつきました。開演前の舞台の設え。
  というわけで,夢見心地で終演後は向かいの京都御苑から送り火を見ることに。ここは東山の「大文字」がよく見える名所のようで,観光バスもたくさん押し寄せていましたが,広いので群衆の密度はそれほどでもなく,ゆっくり見ることができました。
 
 山の中腹にちらちらと灯りが見えたと思ったら,あっという間に大の字にともされ,15分くらいでしょうか,夜空を焦がす炎が見えたと思ったらやがて消えていきます。精霊を彼岸に送る火を焚いて,此岸の私たちの無病息災も祈る京の盂蘭盆会の行事です。
 
  静かに始まって静かに終わる美しい儀式に思いのほか感激。他の文字も見てみたくなりました。来年も是非来よう。ところで今回の京都の写真は全部コンデジです。これは引き伸ばしました。

2015年8月,京都の夏(3),下鴨神社古書市

 早朝の下鴨神社。御手洗池に足をつけることができ,そのひんやりとした素足の感覚に心洗われます。
 
  糺の森の古書市には2年ぶりに参戦。今年は最終日に行ってみたら,おおこれぞ,という掘り出し物にはさすがにめぐり合えませんでした。そのかわり(と言ってはなんですが),値引き合戦がすさまじい。全部半額!なんていう店もあり,楽しい時間を過ごしました。
 
  今回は図録や画集など美術関係の本を多めにチョイス。西安で美しい切り絵を買ってきたこともあり,「中国の民間切り絵芸術」(張道一著,北京外文出版社)なる一冊を見つけたときは思わず小躍り。まだぱらぱらとしか読んでいませんが,奥が深いようで楽しみ。ちなみに上海空港の土産店で数千円で売っていたこの手の切り絵は,西安の回族街ではなんと1枚5元(100円くらい)。
 
  版画など紙類を多く扱う店ではこんなカードを発見。British Museum所蔵のインドminiatureのポストカードです。これはうれしい。ほかに1982年版のマンディアルグ「城の中のイギリス人」(白水社)などなど。マンディアルグは外函の装幀のチェック(イギリスだから?)文様にちょっと意表をつかれてジャケ買い。

2015-09-22

2015年8月,京都の夏(2),龍谷ミュージアム「玄奘」展

 西本願寺の向かいにある龍谷ミュージアムは前から気になっていた美術館。この夏,「玄奘」展を訪れました。堀川通りに面したファサードからエレベーターで地下に下り,エントランスは端正な中庭に面して配置されています。フロアが分かれた展示室そのものはあまり広くありませんが,とても気持ちのよい建物です。
 玄奘展の副タイトルは「迷いつづけた人生の旅路」とあり,「多くの困難に対峙し,迷いを抱えつつも歩みを進める玄奘さんを支えた、その志とは」(チラシより)何かを考える展示です。薬師寺に伝わる宝物が中心ということ。
 
 玄奘さんの生涯を辿る展示はとてもわかりやすく,一人の人間の生を静かに,そしてドラマチックに語っています。天竺で出逢った美しいガンダーラ仏,唐へと持ち帰った西域の言語の経典,唐で訳された経典,日本へ伝わった経典や仏像。とりわけ興味をひかれたのが五天竺之図でした。
 
 大きく引き伸ばされた複製が床に置かれ,その旅程を辿ることができるようになっています。6月に訪れたばかりの西安(長安)が出発地であり,帰着地でもあるわけで,あの西の城門から出発したのか,という身体的な感覚で見ることができてとても面白かった。まさに時空を超える旅をした気分です。
 
 当時の長安の図や大興善寺のパネル展示などにも興奮。閉館間際までじっくり堪能しました。(川口美術へ行く時間が無くなった!) 

2015年8月,京都の夏(1),高麗美術館・大宮通り界隈

 8月の記録をいくつか。北陸新幹線が開業したのを横目に飛行機で金沢へ(マイルもたまるし)。慌ただしく滞在したあとは下鴨神社の古書市最終日に間に合うように京都へ向かいます。

 8月の京都の暑さにも驚かなくなってきました。まずはいつものように高麗美術館へ。「高麗・朝鮮の美」展が開催中です。副題は「華麗なる高麗,鮮やかな朝鮮」となっています。
  「華麗」と「鮮やか」を対比させるのはどうなんだ,と思いつつも展示を眺めると,まさにその言葉の通り。朝鮮美術は白磁に代表される質素で簡潔な美と思い込んでいたけれど,高麗美術と対比させて全体像を眺めることで,その躍動的で色彩に溢れた美しさを再発見した思いです。

 さて,高麗美術館へはいつも堀川通りからアプローチしていましたが,大宮通りの方へ抜けてみるとしゃれたお店がいくつもあり,ぶらぶらと散歩を楽しむことに。

  &Premiumに連載ページを持つ花屋「みたて」は長屋の一軒で,畳の間に植物が並んでいてとても素敵。飄々とした雰囲気の若いご主人が親切に対応してくれて,ボウランの苗を購入。旅先で植物を手に入れると,旅の道連れができたようでうれしい。高麗美術館から立ち寄ったと言うと,川口美術で開催されていた「韓国古陶磁探究陶人展」を勧めてくれました。無事に連れて帰ったボウラン。

2015年9月,夏の終わり,龍岩素心の開花

  今年はいつもより少し遅く,夏の終わりに可憐な花が開いた龍岩素心。五つも花がついて,嬉しくてたまらない。こういうとき,接写用のレンズがほしくなります。

2015-09-21

2015年6月,西安(5),陝西省歴史博物館・回民族街

 陝西省歴史博物館そのものは歴史が浅く,開館は1991年のことだそう。陝西省で発掘された先史時代から清代までの文物が約37万点収蔵されています。ツァーの行程に組み込まれていたので,哀しいかな,滞在時間は1時間弱。常設展示スペースを駆け足で見学しただけですが,いつかまたゆっくり見に来たい,と思わずにはいられない質量の展示です。
 
 青銅器や銅鏡・金銀器も素晴らしかったけれど,いちばん面白かったのが陶俑です。特に唐代の,ペルシア方面からもたらされた「胡風趣味」が中国文化と融合して生まれたそれらには,二重のエキゾチズムを感じます。「馬毬」俑の数が多い。ペルシアから伝わり,唐代にはとても盛んだったそう。以前,舞楽の「打球楽」を見て感激したのを思い出しました。まさにここに原点があったわけですね。一角獣はたしか漢代のもの。
  あっという間に集合時間になってしまい,日本語版の展示目録だけをなんとか購入して,次に向かったのは西安にただ一つのモスクである清真寺があるエリアです。賑やかな回民族街は西安の下町といった風情でとても活気があるところ。ドライフルーツや,美しい切り絵などを買って,最後の夕食である西安餃子の名店へ。 
  時間を気にしない気ままな旅もよいけれど,現地で移動手段を考えなくてよいツァーはほんとに便利です。今回は,詳しい歴史解説をとても楽しげに語ってくれた誠実な中国人ガイドの班さんと,旅好きな参加者の皆さんのおかげでとても楽しい旅でした。またいつか再訪できる日が来ますように!


2015-09-13

2015年6月,西安(4),西の城門・大興善寺

  西安3日目は西の城門からスタート。完全に保存されている古代城壁としては世界最大ということ。軍事砦でもあるということで,その堂々たる威容にも,そしてその完璧な美しさにも圧倒されます。柱の装飾がきれい。
  シルクロードの起点というのが西安観光の一番押しでもあるようで,西安への旅は「中国へ旅行した」というより,「西域を訪れた」と言ってみたくなります。そして平城京や平安京のモデルでもあったわけだから,日本人のDNAには響き合うものがあるのも当然なのでしょう。とにかく街のどこを見ても美しく,ほっとします。街角で枝ごと売られていた荔枝。
  おいしい精進料理の昼食をいただいてから,玄奘三蔵が経典の翻訳事業を行った大興善寺へ。 密教装飾に眼を奪われ,有名な大雁塔を見上げる。玄奘三蔵の足取りについては,8月に京都の龍谷ミュージアムの「玄奘」展で復習をしてきたので,また稿をあらためて。大興善寺の次は兵馬俑と同じくらい楽しみにしていた陝西省歴史博物館へ向かいます。
 

2015-09-09

2015年6月,西安(3),旅の記憶

  9月になってしまいました。3か月も前の旅の記録をアップするのもなんだか今更,という気がしないでもないのですが,それでは前に進めないのでやっと更新することにします。とは言え,白状してしまうと,兵馬俑以外の感想はひっくるめて「西安は素敵だ」としか思い浮かばない。。そして,気まぐれな西安の夏の気候。昼間はからからの高温で,写真も乾いたピンボケになってしまった。夜はバケツをひっくり返したような突然の雷雨に,びっくり仰天でした。

 空海ゆかりの青龍寺と,夜には歴史大テーマパークの大唐芙蓉園のライトアップと三国志の一場面のショーを楽しむ。