2018-09-21

2018年9月,東京六本木,「狩野芳崖と四天王」展

   地下鉄六本木一丁目駅から泉屋博古館分館へは屋外エスカレーターを使ってアプローチするのですが,なんとなく,日常が「下界」のように思えてきてしまいます。とりわけ,「悲母観音」の狩野芳崖を見に行くとなれば,美術館が近づくにつれて空気も清らか(?)に感じます。  「狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展が10月28日まで開催されています。

 狩野芳崖と,その四人の高弟,岡倉秋水・岡不崩・高屋肖哲・本多天城を紹介する展覧会です。それぞれの画業は今まで目にしたことがあったかもしれないけれど,師と弟子という関わりを意識して見ると,瞠目するばかり。師の絶筆「悲母観音」の模写(高屋肖哲)など,師の魂をなぞるような凄まじい迫力に圧倒されます。狩野芳崖「岩石」は光と影の表現が斬新でかっこいい。
美術館より特別に撮影の許可を頂きました。以下同。
  ところで,芳崖の「悲母観音」ほか三大名画の展示は後期(10月10日)です。これはぜひもう一度足を運ばなければ。構図がよく似た「出山釈迦図」(観音ではなく釈迦の図)は通期展示で,目を凝らすと岩の上に真白の獅子の姿が見えます。そのすぐ近くに橋本雅邦「神仙愛獅図」と狩野芳崖「獅子図」が並んでいるのが面白い。横顔の仙人はフェノロサの顔とも言われているそうで,確かに西洋人のように見えるから不思議。
 
 個人的には本多天城がとても面白かった。「日之出波涛図」のダイナミックな荒波! そして岡不崩の繊細な花鳥図も美しい。後半生は本草学に傾倒したのだとか。 

  展覧会の後半は,岡倉天心が率いた日本美術院に属した横山大観,下村観山,菱田春草,西郷孤月,木村武山の展示です。芳崖四天王は日本美術院には参加しなかったということ。かたや狩野派の残光,一方は近代化を克服した日本画の大家たちという図式がわかりやすく,見終えて「近代日本画」という一コマの講義を受けた気分です。

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