2019-02-03

読んだ本,「ペルーの異端審問」(フェルナンド・イワサキ)

 フェルナンド・イワサキの「ペルーの異端審問」(新評論)を読了。バルガス・リョサが序文を寄せ,八重樫克彦・八重樫由貴子が訳している。両氏が「ラテンアメリカ文学の次なる名手をお探しの読書家に、自信をもってお薦めする」と書いているので,期待度満点で読み始めた。
 
 とにかく驚いたのは,ここにある17の短編は,実際にあった異端審問沙汰の事件を小説に仕立てたものであるということ。しかもその事件とはどれも性にまつわる珍事件なのである。
 
 最初の数章は,その過激な内容にやや辟易とした感を抱いたのだが,読み進めるうちに,残虐な事件を,ユーモアあふれる(というより抱腹絶倒の)一編の物語に巧みに変換する作家の力業に脱帽というほかない。訳者の力量もいかばかりか。
 
 本文は引用しにくい文章ばかり(!)なので,バルガス・リョサの序文から。「意外性や大胆さ,こっけいさに加え,特筆すべきことが本書にはある。それは多くの人々が考えるように,歴史と文学は相容れないものだという先入観を払拭している点だ」(pp.16-17)

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