2019-02-24

読んだ本,「異界を旅する能 ワキという存在」(安田登)

 「異界を旅する能」(安田登著 ちくま文庫2011)を読了。能を見るようになってから,「ワキという存在」にずっと惹かれているので(ワキ方の福王和幸さんのファンというミーハーな理由もあるのですが。。),とにかく奥深い内容に感動しっぱなしでした。
 
 「旅をする僧」という存在・視点から見る能の世界がわかりやすく語られていて,今までたくさん見た番組を思い出して,ああ,そうかと膝を打つことばかり。とりわけ,第3章「己れを『無用のもの』と思いなしたもの」の「出自ゆえに苦しむ」で取り上げられている「善知鳥」のシテの苦しみ,ワキである僧への救済への祈りを語る筆致は冷静であり,情熱的でもあり,頁を繰りながら,脳内には能舞台が展開していくようでした。
 
 読み終えて久しぶりに能楽堂へ行きたくなりました。ちょうど橋岡会の「舞謡会」のお誘いをいただいて,国立能楽堂へ。時間の都合で「熊野」だけ拝見。これはワキは平宗盛で,シテの愛妾・熊野が老母に会いに行きたいと言うのに,花見に付き合え,というワガママ(?)な役回り。「異界を旅する」話ではありませんでしたが,母を想う熊野の心情が美しく,ともに桜で覆われた京の都を旅してきた気分。
 
 国立能楽堂資料展示室では「囃子方と楽器」展も。たくさんの美しい鼓胴の展示。 

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