2019-02-03

読んだ本,「TIMELESS」(朝吹真理子)

 朝吹真理子の「TIMELESS」(新潮社)を読了。前作の「きことわ」から7年ぶりの新作だという。
  愛のない結婚を選択する,うみとアミという夫婦。そしてその子のアオ。うみの母の芽衣子さん。一見,家族の物語のようでありながら,物語の主人公は「時間」そのものかもしれない。その「時間」とは,彼ら登場人物のものでも,読者のものでもなく,朝吹真理子という作家の「時間」なのだろう。彼女の今,彼女の過去,彼女のこれから。

 古典文学や日本史の知識(知識と言ってしまおう),お気に入りらしいブラジルの音楽(私にはカルロス・ジョビン以外はついていけない),おしゃれな暮らしに欠かせないアロマや服飾のブランド品などなど。紡がれる物語と同じくらいに,作家の素敵な「今」がこれでもかと羅列されていて,溜息が出てくる。

 印象に残ったのは,ストーリーとは何の関係もないこの一文。「リオデジャネイロは一月の川という意味だとこよみの友人だったイレーネが言っていた。River of January.」(P.150)こよみはアオの姉,うみの養女で,イレーネは死んでしまった。そしてもう一つ印象に残ったのは,本の最後のページに羅列された参考文献(?)の中の1冊。「アミとわたし」(稲川方人)。稲川方人にこんなタイトルの詩集があったとは。

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