島田雅彦「君が異端だった頃」(集英社)を読了。「自伝的青春私小説!」である。ほぼ同年代,デビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲」から追いかけてきた読者としては,読者自身の「私小説」でもあるのかもしれない。
壮絶(!)なモテ人生の披瀝に,にやにやしっぱなしで読み進めたが,大江健三郎,中上健次,佐伯一麦らとの文壇愛憎劇には驚きの連続だった。一読者として,中上健次はちょっと苦手意識がある。島田雅彦の導きがあれば読めるかもしれない。わが偏愛する小説家は,私を未知の世界へと導いてくれるのだ。
「未確認尾行物体」や「夢使い」の頃が自分の人生の過渡期(!?)とも重なって,思わず涙腺がゆるみそうになるも,ニューヨークで生活を始めたアパートメントの住人達との交流の場面には腰を抜かしそうになる。マーサ・グラハム・カンパニーの折原美樹氏が同じアパートメントに住んでいたのだという!
昨年,折原美樹氏が首藤康之らと共演したダンス公演を見に行ったのだ。どんなダンサーかよく知らず,自分と大体同世代の人なんだな,くらいに思っていたら,こんなところで自分の偏愛する世界がつながるとは! 誰かに話したいけど,わかってくれる人がいるものやら。
10月にbunkamuraで島田雅彦と金原ひとみのトークイベントがあるらしい。ストーカーと思われないように,こっそり隅の方から「最後の文士」の姿を眺めることにしようと思う。
安部公房とのやりとりのくだり。「この時,安部さんは二つだけ文学の話をした。君がロシアン・スタディ出身だと知ると,こういった。/-みんな偉そうにドストエフスキーやチェーホフの話をするけれども,本当に読んでいるのかね?/なぜそんな疑いを抱くのかと思いながら,君が「いやみんな読んでると思いますよ。安部先生もカフカのヒューモアにニヤリとされたでしょう?」というと,安部さんはしれっとこういった。/-カフカの小説を読んで笑える人は世界にそんなにたくさんいるはずがない。人類はそこまで賢くない。」(pp.244-245)
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